発表資料の仕上げ方 -メッセージを明確にする-

研究技術解説

なんとなく分かりにくい印象を与える発表スライドは,「そのスライドにおいて総じて伝えたいこと=メッセージ」が明記されていないという共通の問題を抱えています.この記事では,メッセージの重要性について解説した上で,よりよいメッセージの三要件を紹介します.

メッセージを明確にすれば,分かりやすく説明もしやすくなる

もしあなたの発表スライドが分かりにくく,かつ説明しづらいものだとしたら,その理由は単純明快です.そのような分かりにくく,説明のしにくい複雑な内容を総じて表現することのできる,分かりやすく,説明のしやすい端的な言葉を用意できていないからです.そのような言葉,すなわちメッセージを用意して明記しておくだけで,スライドは分かりやすく,かつ説明しやすくなります.

1つ1つのスライドでメッセージを明確にすることは,発表の効果を好循環的に高めます.あるスライドで聴衆の理解度が高まれば,次のスライドも聞こうという意欲を生じさせます.さらに,分かりやすい説明がなされたために発表者に対する信頼感も高まります.そうなれば、次のスライドの内容に対する聴衆の理解度&納得度はさらに高まります.

メッセージの3要件

効果的なメッセージを明記できるようになるには,自分が用意したメッセージの良し悪しを判断する基準を持っておかなければいけません.次に挙げる3つの要件はその基準になり得るでしょう.

➀Representative(代表的)であること

明記するメッセージは,スライド中の他の全コンテンツの本質を抜き出した総括表現でなければいけません.例えば,スライド中で複数の事例を紹介する場合は,それらの事例に対して共通して言えることがメッセージになります.スライドに図表を載せた場合には,それらから読み取るべき最も大事なことがメッセージとなります.複雑な図解を載せた場合は,大まかな構造の捉え方の説明(〜は主に2つの部分から成る、等)をメッセージとすればよいでしょう.

この要件は最も重要であり,厳密に守られるべきです.このことはすなわち,そのメッセージにそぐわない内容はそのスライド中から削除するか,目立たなくすべきであることを意味します.例えば,ある観点で事例を紹介するスライドにおいては,別の観点からの事例は載せるべきではないでしょう.図表を記載する場合,その表示はメッセージを読み取り易いように特別に調整されたものであるべきです(例えば変化がメッセージであるなら,差や傾きのみを強調した図表とすべきです.図解表現の場合も同様に,大まかな図の捉え方をメッセージとしたのであれば,そのように捉え易いように調整されたものにすべきです(2つで構成される,というメッセージにしたのなら,2つを色分けして表示するといったようにです).

➁Understandable(理解可能)であること

メッセージはスライドコンテンツの理解を助けるための案内とするためのものなので,それ自体の意味が容易に解釈できるものでなくてはいけません.つまり,メッセージを伝えたときに,「いったい何を言っているんだそれは?」と思われてしまうとだめだということです.複雑な文法を使わず,なるべく短い表現とするのがよいでしょう.

➂Informative(有益な情報)であること

メッセージは,それを聞かせると直ちに前のスライドからの話の発展を把握させられる情報を備えたものでなければなりません.なぜなら,メッセージを伝えたときに「どうやら前のスライドから話はまだ進みそうにないな」と思わせてしまったら,話を真剣に聞いてもらえなくなってしまうからです.「どうやら次の話に移ったようだから,聞い逃さないようにしないといけないな」と思わせられるようなメッセージを用意することを心掛けましょう.

まとめ

なんだか分かりにくい‥というスライドの改善には,メッセージの明記とそれに合わせたスライドコンテンツの整理が非常に有効です.メッセージを必ず明記する!というルールに則ってスライドを作ることで,メリハリとまとまりのあるよいスライドになるだけでなく,曖昧だった自分の思考や意見も明確にすることができます.是非実践してみてください.メッセージを明記した分かりやすい発表スライドが作れるパワーポイント用スライドテンプレートを下の記事で紹介していますので,こちらもご覧ください.

 

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