[サーベイ]ニューロンのモデル

1.マカロック-ピッツのモデル(形式ニューロン)
ニューロンを,0か1かの出力を取る論理素子としてモデル化したもの.ニューロンからでるスパイクの波形はほぼ一定で, 出るかでないかなので,この特性をモデル化したものといえる.出力は,入力の重みつき線形和を閾値関数に入れることで求められる.

2.発火頻度モデル
1のモデルが出力を「発火しているか,していないか」としているのに対して,スパイクの発火頻度を出力としたもの. 出力は,入力の重みつき線形和が,もしくはそれをシグモイド状の関数に入れることで求められる.これは,感覚刺激や運動出力の強さが,スパイク周波数とほぼ比例した関係にあることに基づいたモデル化であり,後者のものは,刺激を強くしてもスパイク発火頻度は飽和するという特性も考慮している[1].

3.スパイクタイミングモデル
2のモデルでは発火頻度自体を出力変数として扱っているのに対して,このモデルでは発火頻度に応じた確率でスパイクが出力として生成するものである.すなわち,ニューロンや回路のより細かい時間スケールの振る舞いをモデル化したものである.最も基本的なものはポアソンスパイクモデルであり,これはポアソン分布に従ってスパイクの出力が決定されるものであり,大脳皮質ニューロンをよく近似すると言われている[1].

4.積分発火モデル
3のモデルは,過去の発火履歴によらず発火が決まるが,実際のニューロンでは一度発火するとその後数ミリ秒は発火しないという特性がある.この積分発火モデルは,この特性を表現できるものであり,発火すると膜電位がある負の値にリセットされ,その後入力の積分によって膜電位が上昇し,それがある閾値を超えるとスパイクを発火する,というものである.

5.ホジキン-ハクスレーのモデル
上記四つのモデルは実際のニューロンの発火を決める膜電位がどのようにして上昇し,また下降するか,ということを考慮していない.このモデルは,ニューロンの細胞膜をコンデンサ,イオンチャネルを動的な抵抗素子として考え,それらのチャネルを通じた各種イオンの流入量が正帰還,あるいは負帰還的な相互作用によって変化し,その結果膜電位がスパイク的に変化する,という様子を模したものである.

6.フィッツフュー-南雲のモデル
5のモデルは4つの非線形微分方程式で表され,振る舞いの予測が解析的に難しいものであったため,それを基本的な特性を残したまま簡素化したものがこのモデルである.二つの微分方程式で表現される.ファン・デル・ポール方程式の特殊な場合である[2].

7.コンパートメントモデル
5のホジキン-ハクスレーモデルでは,細胞膜が一つのコンデンサとしてモデル化されていたが,実際には細胞体と樹状突起の異なる場所では膜電位は異なる[1].そこで,細胞を複数の電気化学的コンパートメントの集合体として考えたものがこのモデルである.複雑だが,スパイクの幅の変化なども表現でき[1],より生理学データに即したパラメータ設定が可能である.

参考:
1.計算神経科学への招待(銅谷賢治,サイエンス社)
2.フィッツフュー-南雲モデル -Wikipedia-

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