説得力のある説明をするためにピラミッド図を意識しよう

研究技術解説

説得力のある説明がうまくできずに苦労してはいませんか.自分の主張に納得してもらえなかったり,反論に負けてしまったりする根本の原因は,「主張を支える論理の構造が相手よりもうまく見えていないために十分な理論武装ができていない」ことにあります.この記事では,キビ団子を作るように桃太郎がおばあさんを説得する場面を想定した例を挙げて,論理の構造を図形として捉えることで,説得力の強さや論理の穴を把握し,より反論に耐えられるように説得力を高める方法を紹介します.

主張したい内容を頂点とするピラミッド図を書いてみる

今回紹介する方法は「ピラミッド図」を書くというものです.これは,事実や意見,解釈など一つ一つの説明項目を四角い石に見立て,ある石が他の石の説得力を高める説得材料になっている場合は,その石の上に他の石が乗っているとみなして図にするというものです.複数の根拠で主張を支えた場合,項目の並びが全体として三角形となるため,ピラミッド構造と呼ばれているようです.

このピラミッド構造の図は,説明の論理構造を反映した図です.下の例を見てください.「鬼退治を成功させたいのでキビ団子を作って欲しい」という要求をおばあさんに強く訴えるためにももたろうが考えた(であろう)ピラミッド図です.説明要素が石のように積まれていること,下段が上段の説得材料になっていること,上段から下段には「だから」の論理があり,下段から上段には「なぜなら」の論理があることを確認してください.

キビ団子を作ってもらう理由の説明のためのピラミッド図の例

ピラミッド図を使えば説明は簡単

上記のようなピラミッド図が書ければ,説明は簡単です.下から読んでも上から読んでも論理だった説明ができます.下から上へ読んだ例と,上から下に読んだ例を挙げます.上のピラミッド図も参照してください.

ピラミッド図を下から上へ読んだ例:
鬼襲来の抜本対策が必要で,今が反撃の好機です.だから,鬼退治に行かないといけません.また,村には戦力がなく,動物はキビ団子に目がありません.だから,戦力確保にはキビ団子が有効です.だから,鬼退治を成功させたいので,キビ団子を作って欲しいのです.

上から下へ読んだ例:
鬼退治を成功させたいのでキビ団子を作って欲しいのです.なぜなら,鬼退治に行かないといけなくて,戦力確保にはキビ団子が有効だからです.鬼退治に行かないといけないのは,鬼襲来の抜本対策が必要で,今が反撃の好機だからです.また,戦力確保にキビ団子が有効なのは,村には戦力がなく,動物はキビ団子に目がないからです.

ピラミッド全体の形状で論理の強さが把握できる

ピラミッド図のよいところは,石を積んで組み上げるピラミッドとしてどのくらい崩れにくいものかをみることで,頂点の主張がどれくらい反論に耐えられる説得力を備えているかを判断できるところです.上の石が複数の石で支えられている高密度で多段のピラミッドであるほど,より強い反論に耐えられます.対して,上の石を支える石が少ない,スカスカで低いピラミッドは,少しの反論で崩れ落ちます

例として先に挙げたピラミッド図をみてみましょう.これは,上段が2つの石で支えらている3段のピラミッドであり,多少の反論には耐えられます.例えば,最下段の石の1つである「今が反撃の好機」という説明に対して,「今は特に好機ではない.なぜなら~」と反論されて石が取り除かれてしまったとしても,「抜本対策が必要」という石は残っていますので,「それでも,抜本対策が必要であるのには代わりがないので,鬼退治には行かなければならないのです」という説明はまだ有効なままです.

対して,下のピラミッド図をみてください.これは,「鬼退治に行かないといけない.だから,鬼退治を成功させたいのでキビ団子を作ってほしい」というシンプルな説明です.1つの石でしか最上段の石を支えていないので,ピラミッドとして大変不安定です.例えば,「鬼退治に行ったって負けるんだから,行かなくていい」という反論を食らってしまったら,最上段を支える唯一の石がなくなってしまいます.そうなると,「鬼退治を成功させたいのでキビ団子を作って欲しい」という説明は全く説得力がなくなります.さらに,2段目がスカスカなので,最上段も直接反論されてしまいます.例えば「鬼退治に行かないといけなくて,鬼退治を成功させたいのは分かったけど,キビ団子なしでもやれるはず」という反論も許してしまいます.このように,どっしりとした三角形でなければ,反論に耐えることが難しくなるのです.

ピラミッドが不安定な例.色々反論を許してしまうので,説得力が弱い.

支える石を増やし,段数を増やせば反論に強い説明ができる

ここまでの例で示したように,ピラミッドは段数が多く,また一つの石が多くの石で支えられている方が,反論に強い,高い説得力のある説明ができる,ことになります.したがって,ピラミッド図を書いたら,下層で支える項目が他と比較して不足している項目がないかを調べましょう.階層が浅いところがないか,階層の枝分かれが少ないところがないかを確認して,最低でも2つか3つの項目で支えられるように根拠となる事実や解釈を追加していきましょう.

最初の2分岐2段のピラミッドの例でも,もっと支える石の数と段数を増やすことができます.下の図は,もともとあった緑色の石に加えて,オレンジ色の石を加えた例です.3つの石で支えられた,より安定した石が増え,段数も4段に増えています.この強化によって,「じゃあキビ団子を買ってくればいいじゃないか」という反論や,「動物にキビ団子を与えたって戦力にはならないだろう」という反論に対する抵抗力が増しています.

最初のピラミッドにオレンジの説明を足して論理を強化した例.支える石の数と段数が増えている.

まとめ

説得力の高い説明ができる人は,頭の中でこのピラミッド図をイメージすることができています.そして,事前にピラミッドを強くしてから,説明に臨んでいます.最初はピラミッド図を実際に書き出してみることから始めましょう.そして,ピラミッドを十分安定したものになるように石を増やしてから,説明に臨むようにしましょう.それを続ければ,書き出さなくても頭のなかで論理の構造を把握できるようになるでしょう.下記のサイトを参考にしました.

  1. [実況]ロジカルシンキング教室 グロービス
  2. ロジカルライティングの論理的思考を手助けする「ピラミッド構造」とは?

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