「結論から話せ」と言われたら -相手に合わせた結論の定め方-

研究技術解説

研究やビジネスの場面では「つまりどういうことか.まず結論から話せ」と口酸っぱく言われることになります.これは結論ファーストと呼ばれるもので,時間が無い中で効率的に議論を進めるために効果がある方法です.しかし,何が結論になるかは一意に決まるものではなく,相手に合わせて柔軟に決めるべきものであるため,実行はそう簡単ではありません.この記事では,まず,なぜ相手に合わせて結論を定める必要があるのかを解説した上で,相手の「今抱えている疑問や懸念」「行動判断基準」「感情の動き」を考えて結論を定める方法を紹介します.

同じ説明でも響くかどうかは相手次第

まず前提として意識すべきことは,あなたが同じ説明をしたとしても,その説明が効果的に伝わるかどうかは相手次第だということです.あなたが「これが結論だ」と考えた説明内容でも,相手は「聞きたい結論はそれじゃない」と考えることはよくあるのです.これが,結論から話すのが難しい原因の一つです.

例えば,世の中には広告や宣伝、新聞記事や論文など沢山の説明で溢れていますが、あなたが興味関心をそそられてより詳しく知りたいと思うのはほんの一部ですよね.興味を持たなかった説明は,あなたにとっては重要でなく,記憶にも残らず,とるにたらないものだと認識するはずです.「聞きたい説明はそれじゃない」とあなたが判断したということです.

相手に「響く」説明とは

相手に響く説明をするには,相手の立場や現状に合わせた説明をしなければいけません.あなたがその時におかれた立場や状況によって興味や関心が変わるように,相手もそうなのだと考えないといけません.

あなたが興味や関心をそそられる説明とは何でしょうか.それは例えば,「今まさに求めている情報」であったり,「次の行動判断の決め手となる情報」であったり,「気持ちを動かされる情報」を含んだものであるはずです.相手にとってもそうなのです.これらの情報を含めることによって、あなたの説明は相手に「響く」ようになるでしょう.以下では,このような情報を説明に含ませるための方法を解説します.

方法①相手が抱えている疑問や懸念への答えを与える

1つ目の方法は,相手がどのような疑問や懸念を抱えているかを把握し,それの答えとなる情報を結論とする方法です.つまり,相手が現在抱えている論点に合わせる方法です.

質問をしてきた相手に対しては,その論点を見定めるのは簡単です.その質問それ自体が目下の論点であり,その答えが伝えるべき結論です.AかBかを聞かれたら,「Aです」「Bです」「どちらもです」「どちらでもありません」「判断がつきません」などです.なぜそのような答えになるのか,その答えをより丁寧に言い換えるとどうなるのか,ということはその結論の後に説明すればよいでしょう.

上司や同僚に対して行う各種報告の場面では,少し難しくなります.もし事前に「これがどうなっているか調べて欲しい」という質問形式で指示が与えられていた場合には,「こうなっていました」という答えを結論とすればよいでしょう.しかし,そのような具体的な指示のなかった予想外の出来事を報告する場合などには,相手が心配しそうなこと,判断に困っていること,責任を抱えていることなど,相手にとって重要な論点を正確に把握した上で,その論点に直接突き刺さる内容を結論とすべきです.例えば,ある機械のねじが緩んでいることを発見した場合,安全管理の責任を抱えている相手(安全かどうかが論点)には「危険な事態が起こっています」,機械を設計した相手(設計が完璧かどうかが論点)には「設計に不具合がありそうです」,機械を利用している相手(機械が問題なく使えるかどうかが論点)には「しばらく使えなくなる可能性があります」という内容を結論とすべきです.

方法②相手に行動判断の根拠を与える

2つ目の方法は,相手にしてもらいたいことを結論とする方法です.機械のねじが外れているのを発見した場合,安全管理者に対しては「使用を禁止して修理に回してもらいたい」,設計者に対しては「壊れないように設計を見直してほしい」,使用者に対しては「使えないことを見越して計画を修正してほしい」という行動をしてもらいたいと考えることができれば,まずはそれを伝えればよいでしょう.その結論を言われた相手は,自分の行動決定の判断に影響する情報が来たぞ,という明確な信号が得られるため,「それがどうした?」ではなく,「わかった.じゃあそれはなぜだ?詳しく聞かせてくれ.」という本心からの発展的な質問を投げかけ返してくれることでしょう.

方法③相手の気持ちに訴える

3つ目の方法は,相手にの気持ちをどう変化させたいかを考えて結論を考える方法です.相手に喜んでもらいたいのであれば,「嬉しい報告があります」を結論とすればよいし,相手に悩んでもらいたいのであれば,「困ったことになりました」というのを結論にすればよいでしょう.

まとめ

「抱えている疑問や懸念に対する答え」「行動判断の根拠」「気持ちの動き」の3つを考えて結論を定める方法を紹介しました.これらのいずれかだけでなく,すべてを同時に考えて伝えるべき結論を深く検討することが最も効果的です.また,普段から相手の論点を探り,「この人はこのことを気にかけているのか」「このことを大事にしているのか」ということを把握しておくことも必要です.下記のサイトも参考にしました.

  1. 結論から話す人になるコツと練習法【アンサーファースト】

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