よい発表,よい論文,そしてよい研究とは -自分と他人の視点の違い-

研究の技術

研究をうまく進めて成果を挙げるためには,まず,どのような発表や論文,研究が良いとされるのかを知っておく必要があります.良さというのは多面的ではありますが,この記事では,研究者(発表者,執筆者)自身にとっての良さと,読み手や聞き手にとっての良さの二つに分けて説明します.これら双方にとって,良さというのは異なります.この違いを把握することで,双方にとってより良い成果としてまとめることができるようになるでしょう.

良い発表とは?

発表者自身にとっての良い発表とは,「自分の発見や成果の価値を認めてもらい,その価値をさらに高めるための援助をもらえるもの」です.自分では重要な発見や成果を得たと考えていても,それを認めてもらえなければ,後々埋もれてなかったことになってしまいます.そうなってしまえば個人的にも悲しいですし,研究分野全体としても損失ですよね.なので,発表によって価値を認めてもらう必要があるのです.良い発表をした時には,その価値をさらに高めるための支援も得ることができます.質疑応答で見逃していた点への気付きや,よいアドバイスをもらえることもそうですし,一緒に研究をしたいと声をかけられることも研究の発展のきっかけとなり得ます.

一方で聞き手にとっての良い発表とは,「自分にとって価値の高い情報を限られた時間内で効率的に与えてくれる情報源」です.研究者は,限られた時間で最大の研究成果を挙げなければいけないため,情報収集の効率に敏感です.予稿集に記載された発表タイトルを見て,自分が成果を挙げる役に立ちそうであればその発表を真剣に聞き始めますが,それほどの価値はないと判断すれば,聞きにすら来ないか,途中で聞くのをやめてしまいます.

良い論文とは?

著者自身にとって良い論文とは,「後世の人が成果を挙げるために多く引用してくれるもの」です.研究の価値は,その後の研究の発展にどれだけ寄与したか,という点にあり,その分かりやすい客観指標の一つに論文引用数(いくつの論文の参考文献リストに載ったか)があります.多くの研究の発展に寄与した論文は,その分野のマイルストーンとしての主要文献となり,研究者の評判を高めます.そうなると,よりよい研究をするための資金や人脈が豊富になるという好循環を生み出します.

読者にとって良い論文とは,「自分がさらなる成果を挙げるための足掛かりを与えてくれる,綺麗に整えられた信頼できる土台」です.研究者は,わかりやすく,正しく,新しく,かつ自分にとって有益な内容が記載されている論文を日々探しています.一から自分たちで研究を始めようとすると莫大なコストがかかり,研究の世界全体としての効率も落ちるため,他の人が到達したところから研究をスタートさせたいのです.ただし,内容が整理されたわかりやすい論文でなければ,そのような土台としては扱いづらいので,避けられます.結論の正しさや新しさが判断できない信頼できない文献も,それを土台にしてしまうと自信の成果の信頼性が損なわれるので,避けられます.

良い研究とは?

研究者自身にとって良い研究とは,「自分が実現したい未来に向かって,世界を少しずつ,継続的に変えていくための着実な一歩」です.一つの研究だけで何かがすぐに大きく変わるわけではありません.論文としてまとめる上で都合のよい結果が得られるとも限りません.ただ,その研究をすることによって,得られた結果がある意味失敗の結果であったとしても,その先にしたいと思っている研究を始めるためのきっかけとなるのであれば,それは良い研究だといえるでしょう.

一方で,本人以外の研究者にとって良い研究とは,「自分では取り組めていなかったが,解かれるべきだと常々考えていた重要な問題を解決できそうな研究」です.つまり,自分が実現したい未来に向かって世界を変えていく上での穴を埋めてくれる研究です.一人ではできることが限られているため,夢が大きな研究者は仲間を探しているのです.

まとめ

本人と,本人以外の研究者の双方の視点から,よい発表,よい論文,よい研究とはなにか,ということを解説しました.自分ではよいと思っていたものがなかなか人に認めてもらえない…という悩みを持たないようにするためにも,双方の違いを認識しておくように心がけましょう.

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