研究発表を楽に聞く方法➁ -中盤では手法と結果のペアの構造を把握する-

研究技術解説

研究発表を聞くのは大変で,苦痛だと感じたことはありますか?実は研究発表は,いくつかのポイントに絞って話を聞くだけで重要な部分のほとんどを楽に理解することができますこの記事では,特に研究発表の「中盤」にどのようなポイントに絞って話を聞けばよいかを解説します.

この記事は,「序盤」に意識しておくべきポイントの解説記事の続きです.こちらの記事を先に読むことをお勧めします.

中盤の話は特にややこしい!

この記事で研究発表の中盤が指しているのは,研究目的が宣言された後で,手法と結果について説明される部分です.序盤に比べて中盤では,式や数値,あるいは専門用語などを織り交ぜた細かく,込み入った説明がなされるので,すべてを記憶しつつ詳細まで理解しようとするのは非常に困難です.細かい情報はいったん聞き流して,話の大枠を捉えるようにしましょう.

中盤は,ペアの構造を意識して聞く! 

中盤で把握すべき話の大枠とは,「手法と結果のペアの構造」です.下の図で図解しています.手法というのは,課題解決のために解消すべき障壁を突破するためのアイデアを実現するための具体的に実施された手順のことを指します.手法は複数の手順から成ることが普通です.結果というのは,各手順を実施することで得られた具体的な情報のことを指します.したがって,手法と結果の間には,ペアの構造が必ずあるのです.「何をしたら何が得られて,次に何をしたら何が得られたか」というものです.

手法は,序盤で把握した「突破のアイデア」と紐づけて捉えるようにすると理解しやすいでしょう.手法として説明される様々な手順の中には,突破のアイデアの実現にとって必須のものもあれば,そうでない些末なものも混ざっているからです.突破のアイデアを実現するうえで必須かどうかを考えながら聞いて,必須のものに絞って記憶するのが効果的です.

同様に,結果も序盤で把握した「障壁」と紐づけて捉えると理解しやすいです.結果として得られた情報にも,重要なものとそうでないものが混ざっています.障壁を解消するのに役立つ情報程,重要な結果です.単に「そんな結果が得られたんだな」と捉えるだけでなく,「この結果は障壁の解消にどれほど役に立つのだろう」と考えながら聞くようにすると深い理解が得られるでしょう.

まとめ

中盤では,「アイデアはどのような手順で実施されたのか」と「各手順で得られた情報は障壁の解消にどれほど役立つのか」の二点を意識しながら聞くことをお勧めします.大切なのは,前者と後者のペアの構造を意識しておくことです.

上記の「手法と結果」のペアの構造を把握するのは,簡単なようでいて実際はなかなか難しいです.発表者自身が発表に習熟していなかったり,研究自体の理解度が浅い場合には,はっきり手法と結果の対応を説明してくれないからです.Aという手法を実施します,とだけしか言っていないのに,Aという手法では絶対に得られない結果を突然紹介し始める,といった大変混乱させる発表をよく見かけます. だからこそ,聞いている側が手法と結果のペアが成立するかどうかに注意して聞いて,成立しなかった場合には,質問をするべきなのです.

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