論文の書き方 -➁アウトライン草案から要約版論文を書き起こす-

研究の技術

論文を効率よく書くにはいくつかのステップを踏むことが重要です.この記事では,アウトライン草案から要約版論文を作成するまでのステップを実例を挙げて解説します.アウトライン草案を作成するまでのステップは下の記事で解説していますので,先にご覧ください.

要約版論文とは

要約版論文とは,メモ書き程度であった「アウトライン草案」を原稿の投稿先の規定(論文フォーマット)に合わせた原稿に書き起こしたものです.アウトライン草案から文の量はそれほど増えませんが,この書き起こしによって,アウトラインの話をどれだけ膨らませれば既定ページ数範囲に収まる原稿が出来上がるかを見積もることができます.つまり,要約版論文を作成することによって,「序論を長く書き過ぎて他の部分が十分に書けなくなった…」という悲惨なバランス崩壊を避けられるのです.

下の図は,上の記事で作成したアウトライン草案から書き起こした要約版原稿のサンプルです.アウトライン草案と見比べてみてください.文の量はほとんど増えていません.また,この段階でもまだ草稿であり,文の順序の入れ替えや内容の追加・削除がありえるので,一文一文の緻密な推敲はまだ必要ありません

要約版論文の解説

題目

論文のタイトルが暫定でも決まっている場合はそれを書けばよいでしょう.決まっていない場合は,サンプルのようにテーマを荒っぽく書いたものでも大丈夫です.バージョン番号も日付と対応させて記載(1月3日に作成したものであればver0103など)しておくと後々便利です.

Abstract

アウトライン草案が書けていれば,アブストラクトも書くことができます.アブストラクトの書き方は下の記事を参考にしてください.この記事ではアブストラクトの書き方を4ステップに分けて解説してます.草稿段階では,推敲をかける前のステップ➁までやっておけば十分です.

節と項の見出し

節の見出しは,「序論」「方法」「結果」「議論」「結論」「謝辞」など,投稿規定に合わせたものにしておきましょう.投稿先によって見出しの規定は違います.例えば「序論」でなく,「緒言」あるいは「はじめに」と書くように定められている場合もあります.

アウトライン草案において項の見出しは抽象的(例:問題①に対応する方法①の紹介)なものに留めていましたので,この書き起こしの段階で具体化することが必要です.論文原稿における項の見出しは,その見出しを見るだけで具体的な内容がわかり,かつ直前の節のどの項目と対応しているかが推測できるようなものであるのが望ましいです.つまり,方法の見出しには序論で用いた用語を,結果の見出しには方法で用いた用語を,議論の見出しには結果で用いた用語をできるだけ使うのがよいということです.例えば,方法の2-1では「動物登用」と書いており,結果の3-1ではそれを受けて「登用に成功した動物」という見出しにしています.このようにすれば,結果の3-1には方法2-1を実施した結果が書いてあるということが容易に推測できます.

項目内での文の置き方

項目内には,アウトライン草案の文を配置していきます.ポイントは,基本的にはアウトライン草稿の1文で1段落を作るということです.これらの1文1文が,完成原稿での各段落の先頭文(要約文・トピックセンテンス)になります.1文で1段落を作るというのには抵抗があるかもしれませんが,これがパラグラフライティングの実践的方法です.パラグラフライティングの本質は,各段落の先頭文だけを抜き出しても全体の話の概要(アウトライン)が把握できるようにすることです.したがって,作成したアウトラインの文章は,それら一つ一つが各段落の先頭文に相当するのです.パラグラフライティングについては下の記事を参考にしてください.

各文への注釈

上のサンプル原稿を見てください.アウトライン草稿から抜き出して配置した文の最後に,カッコ書きで注釈をつけています.例えば,「(乱暴さを伝える具体例)」とか「(これを課題とした理由の説明)」といったものです.これらは,その文の説得力を高めるためにはどんな補足説明があれば効果的かを考えた結果のメモです.

サンプル原稿を使って解説します.例えば,「鬼とは~であり,乱暴で破壊的である」というのが序論一段落目のトピックセンテンスです.この段落の二文目以降には,このトピックセンテンスを分かりやすく,納得できるものにするために必要最低限の補助文を付け足していきます.どのような補助文が必要かを考えるには,「この内容を知らない人,あるいはこの内容を信じていない人」にこの内容を説得しようとする場面を想像するとよいでしょう.この例では,「鬼とはいかに乱暴で破壊的かを信じてもらうために,乱暴さを伝える具体例をあげよう」と考えましたので,カッコ書きで,(乱暴さを伝える具体例)と注釈をつけておきました.

この注釈は,要約版原稿から仕上げ原稿を作成していくための指針になります.骨格であるアウトラインにどのような肉をつけていくかの方針です.仕上げ原稿を書き始める前に,先生か先輩に見てもらって,他に付け足すべき補足説明の指針がないかのアドバイスをもらうとよいでしょう.

要約版原稿の活用の仕方

項と段落の数の把握と調整

要約版原稿を見れば,各節や項に含まれる段落の数を把握することができます.論文の構造の基本ルールとして,1つの節は複数の項で,1つの項は複数の段落で構成する,というものがありますので、1つの節に1つの項しかなかったり,1つの項に1つの段落しかない場合には,構成を見直すべきだと判断できます.アウトラインを読み直して,話題の流れが伝わるようにする上で付け足すべき話題が抜けていないかどうかを確認してみましょう

肉付け可能な文量の把握

要約版原稿は,各トピックセンテンスに対してどのくらいの肉付けの余地が残されているかも教えてくれます.例えば、上のサンプル原稿の場合,図を除いて現状1.5ページです.ここで,投稿先の原稿の規定枚数が6ページだった場合は,図と参考文献リストと,肉付け用の補助文で合計4.5ページまでしか使えないという計算です.図と参考文献リストで0.7ページ使うと考えれば,補助文に使えるのは3.8ページです.現状各段落は2行くらい使っていて1.5ページなので,各段落4〜5行程度の肉付けをしていけばバランスよく規定ページ数に収まりそうだな,と見積もることができます.この見積もりができれば,一部を書き過ぎで他が書けなくなるという事態を避け,必要な情報がバランスよく記載された完成度の高い論文を仕上げることができます

まとめ

アウトライン草案から要約版原稿を作成するステップを解説しました.このステップを踏まえることで,バランスよく補足内容を追加していく方針を得ることができます.要約版原稿を共著者や指導者に確認してもらい,了承を得たら,次はいよいよ原稿の仕上げです.仕上げ原稿の作成の方法は別記事で紹介します.

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