アンドロイド皮膚による高難度手術手技評価
研究テーマ
アンドロイドの皮膚用途として開発してきた肉厚柔軟な触覚センサの応用研究として,腹腔鏡手術の縫合結紮(縫って結び留める操作)と呼ばれる手技の定量的評価法の確立に向けた研究を進めています.
3軸力覚センサ機能を備えるアンドロイド皮膚を患部に見立て,腹腔鏡手術のトレーニングに用いられる器具で縫合結紮操作を行います.すると,その操作が縫合結紮部に与える3軸方向の力を時系列データとして取得できます.医師の操作の癖や滑らかさなどが時系列データのどのような特徴量に反映されるかを解析することで,熟練度評価指標に使える特徴量を探します.この研究は,自治医科大学メディカルシミュレーションセンターの川平洋教授,東京医科歯科大学の中村亮一教授,阪大基礎工学研究科の川節拓実助教,堀井隆斗助教との共同研究です.
時系列データからの操作工程の分割(2018-2019)
腹腔鏡手術の経験を有する3名の医師の方にそれぞれ10回,縫合結紮を実施していただいた際の3軸力時系列データを取得しました.時系列データには,針を刺して糸を通す操作(針刺し操作)と,糸を結ぶ操作に対応する明らかな変化の山だけでなく,誤って器具が患部に触れたり,針を刺し損ねたりする操作も反映されており,感度の良さを確認できました.さらに,針刺し操作の区間データの変動の形から,この操作は「針先端の刺しこみ」「針の向きの調整」「針の貫通」「針の引き抜き」という4つの工程から成ることが伺えました.そして,とくに「針の向きの調整」という工程での操作には,医師毎の癖がよく表れている様子がみられました.このデータ取得に際しては,大阪大学医学系研究科の中島清一教授のご協力をいただきました.
- 関連文献
- Kohei Fukuda, Takumi Kawasetsu, Hisashi Ishihara, Takato Horii, Ryoichi Nakamura, Hiroshi Kawahira, Minoru Asada. Measurement of Three-Dimensional Force Applied to Elastic Suture Training Pads for Laparoscopic Suturing. 41st Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine & Biology Society (EMBC). Germany, 27 Jun. 2019.
- 福田康平.縫合可能な柔軟触覚センサを用いた 内視鏡下手術手技の定量化と特徴分析.大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻 修士論文.2020.