発表が上手な人が行っている論点操作のための3つのポイント

研究の技術

上手なプレゼンをする人は,「場の論点とその流れを操る」ことを大事にしています.場の論点の流れを操ることができれば,「何か色々話はされていたけど,結局何が言いたいのかわからなかった」という評価を受けたり,議論が発散して収集のつかない発表になることを避けることができます.この記事では,発表が上手な人が行っている「論点の操作」のために必要なポイントを3つ紹介します.

論点操作のための3つのポイントとは

この記事で紹介するポイントは,以下のものです.

  1. 論点の流れを予め設計しておく
  2. 論点の流れの現在位置と繋がりを明確に表現する
  3. 自分の論点に場を引き戻す

これらは,プレゼンテーションにおいて論点を操る応用例です.論点を操る基本的な方法や,そもそも論点とは何か,についてはこの記事で解説していますので,まずは先にこの記事を読んでおいてください.

ポイント①論点の流れを予め設計しておく

何よりも大事なのは,どのような論点をどの順で出すかをしっかりと計画的に定めておくということです.発表とは,聞き手の疑問を少しづつ解消していくプロセスです.どんな順番でどのように疑問に答えることで発表後の納得感を高めさせるか,という論点の流れを計画するのは発表者にしかできない特権であり,義務です.発表の各時点において何を論点とするのか,つまり「どんな疑問に答えるための説明をするのか」を発表者自身が分かっていないのであれば,聞いている方は珍紛漢紛です.

論点の流れの設計には,基本のパタンがあります.基本のパタンは下のようなものです.すべて疑問の形式になっていることに注目してください.

  1. この研究では一体何を扱う対象とするのか(主題)
  2. 扱われるものの現状と理想はどんなものか(課題整理)
  3. 課題解決のために解かれるべき問題は何か(問題定式化)
  4. その問題はどうやれば解けそうか(アイデア)
  5. 今回の研究発表では何をどこまで確かめたことを話すのか(目的)
  6. 実際に行ったことは何か(方法)
  7. 実際に得られたものは何か(結果)
  8. 得られたものから何がどこまで言えるのか(考察・議論)
  9. 結局問題はどのように,どこまで解けて,何が新たに主張できるようになったのか(結論)
  10. 問題解決において不十分な点はどこか(リミテーション)
  11. 今回の結論を受けて次に何ができるようになったのか(展望)

この基本のパタンは,「聞き手が疑問に思う典型的な順」に合わせて組まれています.これが重要な点です.発表をこれから聞こうとする人にとって最初に気になるのは,1番の主題です.主題がわからなければ,2番以降の疑問はわきませんよね.聞き手が論点1について説明を聞きたがっている状況で,論点3について話をしてしまうのは効果的ではありません.まずは論点1を先に置き,その疑問を解消することで聞き手が抱く論点を自然に論点2に誘導し,さらにその疑問を解消することで論点3に誘導する,という手順を踏むべきです.

ポイント➁論点の流れの現在位置と繋がりを明確に表現する

いくら発表者が論点を意識していたとしても,それが伝わらなければ論点の認識の食い違いが起きてしまいます.したがって,発表の様々なタイミングで,論点の大きな流れの中の現在位置を明確にすることが必要です.例えば,発表者が論点4のアイデアについての方法について話しているつもりでも,うまく論点が伝わっていなければ,聞き手は論点2の現状行われている方法の説明だと勘違いしてしまう可能性があります.そうなると,論点5の研究目的の説明はまったく意味がわからない,という事態に陥ってしまいます.

今の論点の現在位置が何であるかを聞き手にもはっきりとわかるようにするには,現在の論点が分かるように発表資料の文言や配置を工夫し,説明の言葉を選ばなければいけません.例えば,論点2について説明する発表スライドにおいては,「〇〇についての現状と理想はこのようになっています.現状は~という手法がよく用いられているため,~という状況になっています.しかし,理想的には~となることが望ましいため,手法の改善が必要です.」のように,論点と対応した説明をするのがよいでしょう.また,スライドの一番上の隅に,「この研究で扱うこと」や「〇〇の現状と理想」,「××の解決のアイデア」のような論点と対応した見出しを置くことも有効です.論点を見失った聞き手が,論点が何かを確認することができるからです.

また,論点が移り変わるときには,そのように論点が移ることを自然かつ明確に表現する「論点のつなぎの言葉」を用意することが必要です.例えば,論点2から3に移る場合には,「では,この現状と理想のギャップを解決するには,どのような問題の解決が必要でしょうか」といった表現がよいでしょう.論点6から7に移る場合には,「これらの方法1~3で得られたそれぞれの結果を次の3枚のスライドで紹介します」のような表現がよいでしょう.別記事「発表資料に繋がりと統一感を持たせよう」も参考にしてください.

ポイント③自分の論点に場を引き戻す

発表時間内において論点を決める権利があるのは発表者だけです.発表者は,自分が決めた論点以外の論点でなされた質問や意見に対しては,論点がずれていることをはっきりと指摘し,自分の定めた論点に速やかに場を引き戻さなければいけません.そうしなければ,議論が発散して建設的で実りのある発表の場にならないばかりでなく,「そういえば彼はそもそも何について発表したんだったっけ?」と思われる悲しい事態を迎えてしまうからです.

例えば,論点1で扱うと宣言した研究対象ではない対象について,ある聞き手が質問を投げかけてきたとします.「今回扱われた〇〇でない,××という対象については今回の結果は合わないように思うので結論はおかしいと思うのですが,どうお考えですか」といったものです.この場合にははっきりと,「今回行った研究はあくまで対象を〇〇に絞って行ったものですので,合わなくてもおかしいことはありません」といったように,自分の論点を軸にした回答をしなければいけません.

自分の軸から逸れた議論を始めるのは,発展を生む可能性もありますが,リスクを伴うことを承知しておくべきです.もし,先ほどの質問に対して,「××という対象はよく知らないのですが,おそらく今回の方法を試すと▲▲といった結果になるのではないかと思うので,同じような結論が言えるのではないかと…」といった回答をしてしまうのは非常に危険です.もし××という対象についての専門家がその場にいた場合,「××にその方法を試した研究があるけど,▲▲といった結果にはなっていなかったよ」のような反論をくらい,本来落ちるべきでない発表の信頼度が急激に落ちてしまいます.本来の研究の価値を正しく聞き手に認識してもらうためにも,自分の論点を中心とした議論となるように場を操作することを心がけましょう.

まとめ

発表を成功させるために,論点をうまく操る方法について紹介しました.

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