なるほど!と言わせる発表資料を作るための12のコツ

研究技術解説

スライド形式の発表資料(プレゼンテーション)の作成は,簡単なようでいて実のところ難しいものです.長い時間をかけてへとへとになるまで準備して,やっとの思いで発表しても,「何が言いたいのかわからない…」「そんなこと言ってたっけ…?」のような残念な反応が返ってくることはしばしばです.そんなときは,「なんでわからないんだ…!」とか「集中して聞いていない方が悪いんだ!」と相手に理由を求めるのではなく,「どんな状況で聞いてもらったとしても,なるほど!と言ってもらえる資料を作る技術がまだ足りないんだ」と考えて,技術向上に努めるようにすることが重要です.この記事では,伝えたいことが伝わりやすい発表資料を作る上で最低限気をつけるべきポイントについてまとめます.

①何を価値ある情報として相手に伝えるのかを明確にする

実験で得たデータが手元にあるからといって,それをそのままスライドに張り付けただけで作成を終えてはいませんか?たまたま見つけた先行研究があったから,その内容を記録したメモのようなスライドをそのまま発表資料に使っていませんか?このような単に素材をそのまま載せたスライドは,相手にとって情報の価値が低いため,真剣に聞いてもらったり,納得してもらうことは難しいでしょう.

スライドを作るときには,「このスライドでは何を価値ある情報として相手に伝えるのか」を明確にしてから作るようにしましょう.例えば,あるデータが得られたとき,そのデータが予想していた通りに得られたことや,あるいはデータに意外な内容が含まれていたこと,データを取ってみて初めて気づけたこと,など,「データを取った人にしか得られない情報」を得ているはずです.あるいは,先行研究を調べたときには,あなたが持っている問題意識や背景知識がないと気付けなかった研究の穴やアイデア,あるいはあなたの研究課題に即して評価した先行研究の達成度など,「その研究を担当している人にしか発掘できない情報」を得ているはずです.このような情報こそ,研究発表で伝えるべき価値ある情報なのです.

上記のような価値ある情報は,「メッセージ」とか「スライドの結論」と呼ばれます.もしあなたが研究発表をしたときに「スライドはワンスライドワンメッセージで作らないとだめだよ」とか,「そのスライドでは結局何が言いたいの」とダメ出しを受けたとすれば,その原因は「価値ある情報」を伝えられていないことにあります.自分の経験や知識の価値を最大限に高めて,それを発表することを心がけましょう.

②事実は「事実+解釈」で話す

各スライドでは、客観的な事実だけを伝えるのではなく、それに対する主観的な解釈も併せて話すようにしましょう.例えば,「このようなデータが得られました」と話しながら表やグラフを示すのは事実の紹介で,このデータのここが「興味深い」,「予想外だった」,「増えているとみてよいものだった」などが解釈の説明です.

事実と解釈の両方が必要です.客観的な事実の紹介が欠けると,解釈の説明は説得力を失います.解釈の説明が欠けると,前項①で紹介した情報の価値が損なわれます.ただし,主観的な解釈は不可欠ではあるものの,主観が入り混じる分,「その解釈が妥当であると考えられる理由」をしっかりと説明して,その解釈を相手に納得してもらう努力が必要になります.もし納得してもらないのであれば,その解釈を断念するか,もしくは定量的な分析などによって解釈に客観的な根拠を与えるなどの対応が必要です.

③伝えたいことは図に表す

前項②で紹介した「事実に対する解釈」をうまく伝えるには、それを図示するのが効果的です.伝えたいことをはっきりと図に表現しましょう.例えば,実験の結果得られたデータをグラフとして見せたときに,「結果はよかった」ことを伝えたいのであれば,基準線を引いて,そこを越えている図にするなどの工夫が考えられます.「予想外だった」ことを結論にするのであれば,予想も合わせて図示して違いを明確にするのがよいでしょう.

④先に説明する内容ほど上に配置する

口頭で説明される内容がスライド中であちこち移動すると、聞いている方はどこを見ればよいのかわからなくなってしまいます。どの内容をどの順で説明するのかを決めてから、その順で上から順に説明内容を配置していきましょう。

➄見逃して欲しくない大事な情報ほど大きなフォントにする

大事な情報を小さく書いて、大事でない情報を大きく書く意味はありません。そこを見落とすと話の繋がりがわからなくなる恐れのある内容は目立つように大きく、見落としても構わない内容は小さなフォントで書きましょう。大事な内容を大きなフォントで書くには、内容を減らさずに文字数をうまく減らす工夫が必要です。

⑥伝えたい内容の大枠は図の構造で伝える

言葉での説明には,細かい内容まで言及できる利点がある一方で,細かい内容に意識が向くことにより,話の大枠が伝わらなくなってしまうというリスクをはらんでいます.そのリスクを少しでも減らすために,「話の大枠」が一目でわかる図を用意しておくようにしましょう.

例えば,「2つの要素がある」といいたいのであれば,2つ丸や四角を書いて左右に並べてその中にそれぞれの説明を書く,「2つの要素の間に因果関係がある」といいたいのであれば,それらの間に矢印を書く,「相互作用がある」といいたいのなら2つ矢印を書く,「増加している」といいたいのなら上向きの矢印を書く,などです.

⑦関係するものは近くに置く

意味的に近いものはスライドの中でより近くに置くのが見やすいです。例えば、線グラフの横に凡例の枠を別途書くよりも、各線の間近にデータ名を添えるのがよいです。

⑧色分けを徹底する

どの色をどの意味で使うのかを決めてから使いましょう。重要な言葉を赤にしたり、オレンジにしたり、毎回変えるのは理解を妨げてしまいます。また、あるスライドのグラフでは要素Aを赤で示していたのに、別のスライドの要素Aの説明では青になっていたりすると勘違いのもとになります。ネガティブな内容は赤、ポジティブな内容は青など、ルールを決めて一貫させるのが有効です。

⑨余白に意味を持たせる

余白をどの程度とるのかにも注意を払いましょう。2つの文章の余白が少ないほど関連が強く、多い程関連が弱いような印象を与えます。適当に余白を置くのではなく、関連の強さを意識して調整しましょう。

⑩文字は限りなく短く

同じ内容を伝えるのであれば文字数は短ければ短いほどよいです。意味が曖昧にならず、情報が抜け落ちないように注意しながら、できるだけ短い表現を探しましょう。また、文章をあれこれと書かずに図だけで説明できないかも必ず検討しましょう。

⑪説明しないものは載せない

スライドの面積は限られています。口頭で説明しないものはスライドから省いて、その分説明すべきものを大きく載せましょう。参考として紹介すべきものは、別スライドで用意しておいて、質問で聞かれたら見せるなどの対応で十分です。

⑫わかりやすい名前をつける

覚えてもらいたい重要な概念やものには、短くて覚えやすく、且つその内容が直感的にイメージできる名前をつけましょう。

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