早く論文査読をする方法 -前半-

研究の技術

Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.

研究者としてある程度論文を出すようになると,他の研究者が提出した論文を審査(査読)する機会も増えてきます.この記事では,査読を効率的に進める一つの方法を紹介します.

基本的な方針は,まず,「採録(accept)か不採録(reject)か,もしくはそれらのボーダーかの審査結果を決めるための判断材料を集めるのに専念」し,その後で,「改善のためのコメントを整理しながら詳細を読む」というものです.この記事では,審査結果を決めるまでの4つのステップについてまとめます.

0.準備

用意するのは,(1)紙媒体で印刷した論文とペン,(2)論文電子ファイル(pdf),(3)コメント入力フォーム,の三つです.(1)は,論文の複数のページを見比べたり,前後しながら読み進めたり,気づいた点や内容の関連をメモや図で書き込んでいくのに使います.(2)は文字列検索に使用します.(3)は,論文編集者が用意した査読結果入力webフォームです.

1.タイトルとアブストの流し読み

まず,タイトルとアブストラクトを流し読みして,研究の話題(テーマ)を確認します.論文が対象とする分野の興味に沿った話題であれば,採録,もしくはボーダーの候補として次のステップ2に進みます.

もし分野に沿ったものかどうか怪しい場合は,論文電子ファイルの検索機能を使って,分野の重要キーワードが本文中に含まれているかどうかを確認します.例えば,Social Roboticsの分野なのに,”Social”や”Human”といったキーワードが全く含まれていなければ,分野違いの可能性が非常に高いので,不採録候補とします.この場合,分野違いであることの念のための確認として本文全体を流し読みをして,その確証が得られたら,「この論文は~というテーマを扱ったものであるが,これはこの論文誌の話題に沿ったものではない.そのため,別論文に投稿することを進める」,というコメントをフォームに入力して査読完了です.不採録で終える確証が得られないようなら,不採録候補としたまま次のステップ2に進みます.

2.アブストラクトの精読

アブストラクトを読んで,研究課題・方法・結果の三点セットが何か,またそれらは対応している(方法の選択が課題に対して妥当であり,また結果が課題解決に役立つ内容である)かを確認します.

もし,ステップ1で採録もしくはボーダー候補にしていた場合,これらの三点が明確に書かれていて,尚且つそれらが適切に対応している場合,そのまま次のステップに進みます.この場合,コメント入力フォームに,「この論文は~の課題の解決のため,~の方法を実施したものである.そして~という結果を得ている.」と記載しておきます.もしそうでない場合は,コメントフォームに,「アブストラクトが自己完結的に書かれていない.研究課題,方法,結果の三点を整理して記載すること」と記載します.

ステップ1で不採録候補にしていた場合,三点セットの内容の理解を踏まえて不採録の確証を得たら,不採録として査読終了です.アブストラクトを精読して,さらに全体も流し読みをしたにも関わらず分野違いの不採録にする確証が得られないということはおそらくないでしょう.

3.イントロの流し読みと重要箇所把握

次に確認するのは,研究課題に取り組む必要性,及び採用する方法の妥当性,の二点が論理的に説明されているかどうかです.イントロダクションを流し読みして,これらの説明に強く関連する文章(トピックセンテンス)に○マークをつけます(文章を枠で囲ってもいいし,複数行の左端を括弧でまとめてマークをつけてもよい).逆に,これらの理解に不要な箇所(例えば,先行研究の具体内容の羅列部分)には×をつけておきます.

流し読みが終われば,○マークを付けた部分を繋げて読み返し,論理展開に問題(論理のねじれ,論理の飛躍)がないかを確認します.問題があれば,その旨をコメントフォームに入力します.例えば,「研究課題に取り組む必要性が論理的に示されていない.つまり,筆者は~ということを挙げて必要性を主張しているが,~ということも併せて説明されなければ,説得力に欠ける.」や「イントロダクションの論理展開を見直すべきである.例えば,3段落目と4段落目を入れ替える方が,話の繋がりが分かり易い.」のようなコメントです.論理展開に問題がなければ,そのまま次のステップに進みます.

4.結果の重要性の把握

次に,三点セットの最後の一つである,結果の評価を行い,採録候補とするか,ボーダー候補とするかを決めます.結論の節を流し読みし,得られた結果とその意味合いが整理されている箇所に目立つようにマークをつけます(例えば,大きくグルグルと枠で囲って,「結論!」という見出しをつけておきます).結果がきちんと整理されており,さらにその結果が設定した問題の解決にどのように寄与するかが納得できる(妥当性や新規性がある)形で明確に書かれていれば,採録候補にして,「この結果は,~という意味で価値があり,その妥当性と新規性は評価できる」とコメントフォームに記載します.もしそうでなければ,ボーダー候補として,「結果は重要であるように思えるが,整理されておらず,またその価値も十分に説明されていない」のようにコメントフォームに記載します.

まとめ

論文の詳細を読む前に,上記のような流し読みの4つのステップで研究の大筋を捉えて審査結果を決めておくことで,この後の精読の方針が立つため,後半の査読プロセスが非常に楽になります.査読の後半では,論文を改善するためのアドバイスをまとめつつ方法,結果,議論の節を精読し,最終的な審査結果の判断を下します.

追記

上記の審査は,論文に盗用や剽窃がないことが前提です.著者名が分かる場合にはその著者の他の文献を確認する,剽窃チェッカーを使う,タイトルとアブストラクトの文章でweb検索を書ける,などの手段で別途確認が必要です.

 

ピックアップ記事

関連記事