触感による性格印象デザイン

研究テーマ

コミュニケーションロボットの性格印象は,主に見た目や声によってデザインされてきました.しかし,人がロボットに触れることも想定する場合,触れたときの「触感」もデザイン要素の候補として考えなけれなければいけません.なぜなら,もし触感によって性格印象が大きく変わるのであれば,下手な触感を与えてしまうと,意図したものと異なる性格印象を与えてしまう恐れがあるからです.そこで,そもそもロボットの触感が性格印象を左右するのか,また,そうだとしたらどう左右するのかを明らかにする研究を行っています.触感が性格印象を変えるメカニズムが解明できれば,ロボットの触感を変えることによって性格印象をデザインするという道が拓けます.この研究は,金沢大学 子どものこころの発達研究センターの池田尊司助教との共同研究です.

触り心地と性格印象の評価軸の検討(2015年)

ロボットの被覆の触感の違いが,性格印象の評価をどのように変えるかを調べる準備として,まずロボットの前腕の柔軟被覆を触ったときの触感と,その前腕を持つ小型アンドロイドロボットの性格印象がどのような評価軸の上で評価されるのかを調べました.

過去の柔軟物の触感評価に使われてきた触感形容詞対(硬い-柔らかいなど)と,ロボットや人の性格印象の評価に使われた性格形容詞対(信頼できる-信頼できないなど)を集め,それを基に合計で19の触感形容詞対と46の性格形容詞対を選定しました.この形容詞対は,自分の感じた印象が対となる形容詞のどちらにどのくらい当てはまるか,ということを実験参加者に回答してもらい,印象を定量化するために使います(SD法と呼ばれる手法です).

実験参加者として男女合計で20人の成人を集め,柔軟被覆を取り付けた小型アンドロイドロボットの前腕を彼ら一人一人に触らせて,先の触感形容詞対と性格形容詞対を見せ,感じた印象を回答してもらいました.このロボットの前腕は,異なる材質となるように作成した4種類の同じ形状の柔軟被覆を簡単に取り付けたり交換できるように作られており,実験参加者は,4種類の被覆に対してそれぞれ印象を回答します.つまり,実験の後,4種類の被覆×(19種の触感形容詞対の回答+46種の性格形容詞対の回答)×20人の被験者分の回答データを得ました.

このままでは,形容詞対の数が多すぎて分析を進めるのが難しいので,似た回答傾向となった形容詞対は1つの形容詞グループにまとめて,そのグループ全体の回答データを代表値として扱う方が望ましいです.そのため,得られたデータに対して因子分析を行いました.この因子分析によって,触感形容詞対は4つ,性格形容詞対は3つのグループ(因子)に分けられることがわかりました.触感の因子は,それぞれ,触感の好ましさ,反発感,滑らかさ,生体らしさに関する形容詞対で,一方の性格印象の因子は,親近感,能力,そして活発さに関する形容詞対で構成されていました.つまり,今回の実験参加者は,今回のロボットの被覆と性格に関して,これら7つの評価軸(因子)において異なる印象を感じたということが言えます.したがって以後の分析は,これら7つの軸に関して実施します.

触り心地と性格印象の結びつきの解析(2015年)

上述の回答データを基に,触感因子と性格印象因子の間にどのような因果関係があるのかを解析しました.もしある触感の因子と,ある性格印象の因子の間で統計的に有意な因果が見いだされれば,その触感に違いがある場合に人が感じる性格印象も連動して変わる,と判断できます.

このような因果構造を推定するために,触感因子から性格印象因子に向かう因果の向きを仮定してパス解析を実施しました.その結果,複数の有意な因果が見出されました.例えば,触感の好ましさ因子から,性格印象の親近感及び活発さの因子へは正の因果がみられました.つまり,被覆の触り心地がよいと,そのロボットは親しみやすく,また活発な性格だと認識される傾向にあるということです.また,触感の反発感因子から,性格印象の能力及び活発さの因子へも正の因果がみられました.さらに,触感の滑らかさ因子からは,性格印象の能力因子へは負の因果がみられ,また,触感の生体らしさ因子から性格印象の親近感因子へは正の因果が,能力因子へは負の因果が,そして活発感因子へは正の因果がみられました.このように,触感のどのような印象がどのように性格印象に影響するのか,そのメカニズムが明らかになってきました.

関連論文:

  1. Yuki Yamashita, Hisashi Ishihara, Takashi Ikeda, Minoru Asada. Path Analysis for the Halo Effect of Touch Sensations of Robots on Their Personality Impressions, in Proc. of International Conference on Social Robotics (ICSR). Kansas City (USA), Nov 2, 2016.
  2. 山下裕基, 石原尚, 池田尊司, 浅田稔. 被覆接触によるロボットの性格印象変化における外観の影響. 第 171回 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会. 大濱信泉記念館(沖縄・石垣島). Jan. 23. 2017.
  3. Yuki Yamashita, Hisashi Ishihara, Takashi Ikeda, and Minoru Asada. Investigation of causal relationship between touch sensations of robots and personality impressions by path analysis. International Journal of Social Robotics, 11(1), pp. 141-150, 2019. (Submitted: Oct 24 2016. First decision: Jan. 17 2018. Accepted: Apr. 28 2018, First Online: June 7 2018)

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