発表資料の各スライドに対する自己チェックリスト

研究技術解説

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研究発表資料の作成において,全体の構成を練ることも重要ですが,各スライドを個別に洗練させていくことも重要です.この記事では,各スライドに対して確認していくべき項目を重要な順で紹介します.

1.論点と論証の明確化

相手に納得感を与えられる発表にするには,各スライドでどんな疑問に答えようとしているのか(論点),それにどんな答えを出すのか(結論・キーメッセージ),その答えはどのような根拠に基づいて導出されたのか(論証・サポートデータ)を明確かつ適切に示すことが何より大事です.

スライドを作り始める前に,

①そのスライドで答えようとする疑問は何か(論点),

②それにどのように答えを出して次のスライドに進もうとするのか(結論・キーメッセージ),

③答え(結論)の正しさをどうやって証明するのか(論証・サポートデータ),

を整理してそれらを一言で説明できるようにしておきましょう.これらの点を説明できないうちにスライドを作り始めてしまうと,何が言いたいかわからない,正しさもわからない説明になってしまいます.

2.結論の表現の絞り込み

各スライドで聞き手の推測に頼らず明確に伝わるようにしなければいけないのは,結論です.最低限,結論さえ伝わっていれば,聞き手は論点と論証をなんとなく推測しながらも発表者であるあなたの意見を聞き続け,発表後に質問で裏をとることはできますが,結論が伝わっていなければ,「何を言っているかわからないから質問もできない」状態になってしまいます.

結論は,相手の記憶に残す必要があるため,キャッチコピーのようにメッセージ性の強い,一目で伝わるインパクトのある言葉が相応しいです.

①より直観的で短い表現にできないか,

②違った意味に取られないか,

③前後の話との関係が一目でわかるか,

を確認しつつ表現を洗練させましょう.短く,明確で,話の流れに沿った言葉は理解しやすいものです.冗長表現の削除や,相手になじみのある言葉や専門用語の選択,語順の検討など,推敲の技術が必要です.そのように洗練させた結論の言葉は,スライドの中で最も目立つ上部に,最も大きな力強いフォントで記載しましょう.

3.論証の作戦

スライドを切り替える瞬間に,話題の移り変わり(次の論点)を説明し,そしてスライドが切り替わったら,即座に結論を伝えます.それができたら,次に大事なのはその結論の説得力を高める論証を,いかにシンプルかつ明確に示すか,という作戦です.論証の説明の正確性を重視しすぎると,時間が足りなくなります.しかし,論証の説明が不十分だと,結論に疑念を持たせてしまいます.

①話をする相手の納得感を高めるのに最低限の根拠は何か,

②その根拠はどのような表現にすれば結論の説得力が伝わりやすいか

を検討して,スライドに載せるべき必要十分な情報を決めましょう.情報量が増えれば増えるほど短い時間で理解することが難しくなっていくので,持っている情報をやみくもにすべて載せればよいわけではありません.相手に合わせた取捨選択が必要です.

4.配置の調整

載せるべき表現や情報が定まったら,次に検討すべきは,それらの配置の最適化です.

①先に話すもの,より重要なものほど目立つ場所に,目立つ形式で配置されているか,

②記載されている情報のどれが結論で,どれが根拠で,どれが論点の記載なのかが明確にわかるか,

を確認しながら配置の場所と形式を決めましょう.スライドの中で目立つ場所(最初に目が行く場所)は基本的には左上なので,最も伝えるべきメッセージは左上から始めて,大きな力強いフォントで記載するのがよいでしょう.また,記載した内容が根拠説明なのか,詳細説明なのかも一目でわかるようにしましょう.もしそれら複数の種類の情報を一つのスライドに載せる場合(基本的にはスライドを分けた方がよい)には,区別ができるように枠で囲ったりスペースを調整したりするべきです.

5.図解

言葉は正確性に長けており,図は直観性に長けています.言葉だけではすぐには理解しづらい内容でも,図だと一目でわかるものにできます.また,効果的に図解された内容は,見ている方の想像力を掻き立て楽しませるだけでなく,より深い理解にもつながります.

①記載する内容は図や表,グラフなどにできないか,

②よりよい図解表現はないか,

③意味が曖昧な表現になっていないか,

④何を伝えたい図か一目でわかるか,

を確認して,効果的な図解を心がけましょう.

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