研究発表の各セクションの役割

研究技術解説

研究発表のスライドは,大抵の場合「背景」「目的」「方法」「結果」「結論」「課題」「展望」の7つのセクションで構成されます.わかりやすく効果的な研究発表にするためには,これらのセクションの役割を把握し,その役割が発揮されるようにそれらのセクションを書かなくてはなりません.この記事では,発表資料中における各セクションの役割を紹介します.

大事なのは先の展開が読めるようにすること

研究発表の成否を決める第一条件は,話のわかりやすさです.そして,わかりやすい話とは先の展開がある程度読めるものです.したがって,研究発表を成功させるためには各セクションで述べる話がその先のセクションの話の予告になっているべきです.各セクションのスライドを作る際には,ともすればそのスライドの内容だけに集中してしまいがちですが,セクションの間で内容の対応が見えやすいかどうかを確認することを忘れないないようにするのがよいでしょう.

「結論」の前後で話の流れの向きは異なる

「結論」のセクションの前後で話の役割は大きく異なります.それは,話の向かう向きが異なるからです.下の図1にセクションごとの役割の違いをまとめています.「結論」の紹介までは,「結論を納得させる」という発表における最も重要な目標を達成するために,「結論」に向かう明確な一方向の話題展開が見えるように書かれるべきです.それに対して「結論」以後のセクションは,「結論」までの話題を逆方向に遡っておさらいをするために書かれるべきです.

図1 セクションの役割の違い.結論の前後で役割が大きく変わり,序盤・中盤・終盤で発表の戦略目標は違う.

各セクションで強く意識しておくべきこと

「結論」までのセクションの各々は,以下のような役割を果たすために紹介するのだということを強く意識しておきましょう(この役割を果たさない内容は,「余談」であり,時間の限られる発表では優先的に省くべき内容です).

  • 「背景」は「目的」を予想させ,「目的」に価値があると納得させるために紹介する
  • 「目的」は「結論」を予想させ,「結論」に至るまでの話の理解度を高めさせるために紹介する
  • 「方法」は「結果」を予想させ,「結果」のデータを短い時間で把握しやすくさせるために紹介する
  • 「結果」は「結論」を予想させ,「結論」の妥当性を確認しやすくするために紹介する

それに対して「結論」以後のセクションは,「結論」以前までの話と以下のように対応させることを心がけましょう(「結論」以前までの話と関係のない話をしてはいけないこともないですが,相手には響きにくいということを認識しておくべきです).

  • 「課題」は「結果」から「結論」に至る話の「穴」を認識していることを示すために紹介する
  • 「展望」は「背景」で紹介した「目的の価値」と「結論」の関係を具体的に紹介する

まとめ

各セクションには明確な役割があり,その役割を果たすように紹介されるべきだということを述べました.各セクションの具体的な書き方については別の記事でまとめます.

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