研究発表中盤戦の攻略 -方法スライドから結論スライドまで-

研究技術解説

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研究発表の序盤戦で「研究の目的」について納得してもらえたとすれば,次の勝負は「結論をいかに納得させるか」です.この記事では,10~15分程度と発表時間が短い場合の中盤戦の攻略法についてまとめます.序盤戦の攻略法の記事はこちら

 

攻略の概要

中盤戦に含まれるのは,「方法」「結果」「結論」の三つのセクションです.別記事「研究発表の各セクションの役割」に記載している通り,「方法」は「結果」を予想させて「結果」のデータを短い時間で把握しやすくさせるために紹介し,また「結果」は「結論」を予想させて「結論」の妥当性を確認しやすくする,というのが基本です.逆に見れば,「結論」の妥当性の根拠となる「結果」だけを紹介し,それらの結果を得るために実施した「方法」のみを紹介するということが基本になります.これらの三つのセクションの横の繋がりが明らかとなるように資料を作成しましょう.

方法スライドの攻略

方法スライドで紹介すべきは,「いくつの方法をどのように組み合わせて目標に挑むのか」という作戦の話と,「どの方法からどのような結果を得ようとするのか」という結果との対応の話です.やたらめったら実験環境や設定を並べて説明すればよいというものではありません.その方法の説明を聞いたときに,「その方法で目的は達成できそうだな」「その方法ではこんな形で結果のデータがでてきそうだな」と思えるように,方法の説明の仕方を工夫する必要があります.

方法の全体概要から話す

複数の方法を組み合わせている場合は,方法の数,使う目的,使う順(つまり目的を達成するための作戦)を一枚のスライドにまとめて紹介しましょう.発表スライドの序盤で「問題解決のアイデア」を紹介してるのなら,それがどの部分にあたるのかも紹介しましょう.このスライドで重要なのは,「この方法でやれば確かにうまく目的が達成できそうだな.詳細を早く聞きたいな.」と聞き手に思わせることです.各方法には覚えやすい名前を付け,また番号を振っておくとよいでしょう.

結果と数を合わせる

方法の説明と,得られる結果データの対応をわかりやすくする工夫の一つは,その発表で見せる結果が三つあるなら,方法も三つに分けて説明する,という数を合わせるやり方です.この場合,方法スライドの1ページ目で,①②③のような番号を振った個別方法があるなら,次からの3枚のスライドで,方法①②③のそれぞれの解説をする,という構成がよいでしょう.

結果のまとめ方の形式を予告する

方法の説明と,得られる結果データの対応をわかりやすくするもう一つの工夫は,方法を説明するときに,その方法から得られる結果の見せ方の形式を予告しておくことです.形式というのは,各データの在り方(どのような範囲の値なのか,記号なのか)とデータの並べ方(例えば,表なのか,折れ線グラフなのか,散布図なのか)です.方法のスライドで結果のデータそのものを見せる必要はありませんが,例えばこんな感じでデータがそろいますよ,という説明をするために,簡略化した表やグラフを載せておくとよいでしょう.

結果スライドの攻略

結果スライドで紹介すべきは,「結論」を下すために必要最低限の結果です.「結論」と関係のない結果は省き,関係のある結果は,関係が分かる形に整理して紹介しましょう.

結論に繋がる解釈(考察)こそが重要

結果のスライドでは,得られた数値だけを載せるだけでは不十分です.大抵の場合,そのような数値はあくまで「結論」を下すための根拠データだからです.結論を下す上で,その数値のもつ何らかの特性(ある閾値を超えている,とか,何かと相関している,とか)や傾向(増加している,とか.)がどうだったか重要なはずです.そうであれば,「その特性(や傾向)はこうだった」という明確なメッセージをスライドの上部に大きく記載しましょう.

解釈のために特化したデータの見せ方にする

上で述べたように,伝えるべきはデータそのものというより,それに対する解釈です.したがって,データの見せ方も,その解釈がしやすいようにしておくべきです.例えば,「増加傾向にある」という解釈を伝えたいのであれば,増加の様子が判断できるグラフにし,グラフの傾きの数値なども載せておきべきです.もし「ある閾値を超えている」という解釈を伝えたいのであれば,閾値のところに線を引いておくべきです.

結論スライドの攻略

結論スライドは,研究発表スライドの中で一番重要なスライドです.聞き手はこのスライドに何が書かれているのかを心待ちにしています.短い言葉で,はっきりと,得られた結果の解釈(の組み合わせ)で結論づけられるメッセージを記載しましょう.

目的と対応させた表現にする

「目的」は「結論」を予測させるものにする,ということを別記事「序盤戦の攻略」や「研究発表の各セクションの役割」に書きました.「結論」のスライドでは,「目的」のスライドで聞き手に想像させたような形で結論を書きましょう.例えば,目的スライドで「AがBであるかどうかを明らかにする」であれば,結論スライドでは,「AはBであった」のように書きましょう.

紹介した結果の解釈の組み合わせから得られる結論にする

結果のスライドで述べた解釈の組み合わせだけから導出できるメッセージを結論にしましょう.つまり,「結果①からAが言えます.結果②からBが言えます.AとBがともに成り立つので,Cだと結論付けられます」といったように論理立って説明できるようにしましょう.紹介した結果からは導き出せない結論は,そこまでは言えないだろうという「飛んだ結論」になりますし,結果を紹介しなくても出せる結論なら,結果を得る努力は何のためにしたの?という「研究すべきでもない当たり前の結論」ということになります.

 

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