[聴講メモ]「思考研究の最前線」講演会

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京大GCOE・関西思考研究会共催.2009年8月30日, 京都大学.

松香敏彦先生(千葉大学文学部行動科学科)「Correlation sensitivity, linearly separability, and predictive inference in models of category learning.(カテゴリ学習のモデルにおける相関敏感性,線形分離性,予期的推論)」
Categolizationはデータ圧縮や抽象化の手法であり,人間もこのような認知の仕方をしていると考えられる.では,この能力はどのように表象されているのだろうか.これまでに提案されてきたカテゴリ化のモデルは大きくわけて,rule theory,prototype theory,exemplar theory,に基づいたものである[1].この講演では,主に松香先生の提案したprototype theoryのモデル(OEDIPUS)とKruschke 92のexemplar theoryのモデル(ALCOVE)の解説と比較を通じて,prototype theolyのモデルが人の高次認知のモデルであると考えるのに大きな問題がなさそうであるということが主張された.

prototype modelはexemplar modelに比べてカテゴリの抽象度が高いが,その分カテゴリサイズの推論が難しくなるという問題がある.また,一つのプロトタイプでカテゴリを表象しようとするため,非線形分離を扱うためには何らかの工夫が必要となる.人がいくつかの構成要素から成る物体を複数種類観察して,カテゴリわけをしようとする際には,観察が進むにつれてその注意箇所が要素の一部に偏っていくという,選択的注意の傾向がみられる.OEDIPUSは,そのような選択的注意の傾向を取り入れたprototype modelであり,特徴次元間の相関に注目してカテゴリ学習をするというものである.このモデルは,物体のカテゴリの判定エラーとモデルの複雑さを含んだ目的関数を最小化するように勾配法を用いて学習される.すなわち,非線形に分離したようなデータに対してもできるだけモデルが単純になるように学習される.このモデルの学習過程は,Exemplar modelであるALCOVEに比べて,人の学習過程により似た傾向を示した.今後は,状況に依存して表象が変わるようなモデルを構築することを目指しておられるようだ.

[1] Rule theoryは,それぞれのメンバに関して必要十分な特徴(ルール)を持たせてカテゴリの表象とするもの(例:犬のカテゴリ=四本足で,吠えて,尻尾をふるもの),prototype theoryは一つの代表点でそのカテゴリを表象するもの,exemplar theoryはそのカテゴリを形成する事例データそのものによって表象するものである.これらのモデルを用いて何かを認知する場合には,各モデルの表象との類似度に基づいてそれが何のカテゴリに属する物であるかを判定することになる(Similarity-based categolization).

Steven A. Sloman先生(Cognitive&Linguistic Science, Brown University)「Asymmetries in Causal Induction(因果帰納における非対称性)」
人は,カテゴリ的帰納(categorical induction)をする場合に,その因果構造(causal structure)に注目する.従って,「The lake contains toxins. Therefore, the fish in the lake contain toxins.」は,適切で直接的な因果性を持ったよい説明である.しかしながら,一方で直接的でない因果構造を持った説明もありうる.例えば,「The mother of a newborn baby has dark skin. Therefore, her baby has dark skin.」という説明は,二文目の結果に大きく影響しうる「父親の肌の色」という他の原因を考慮していない.このように,因果の説明には複数の大きな原因から一つの結果が得られるような構造がありうるが,人はこのような構造をどのように認知しているのであろうか.

このことを調べるため,Sloman先生は,二種類の因果説明文に関して,原因から結果が得られる確率(Causal条件)と,結果から原因が得られる確率(Diagnostic条件)を被験者に答えさせる実験を行った(Fernbach, Darlow&Sloman).因果説明文は,原因が一要因であるもの(No Alternative causal条件)と,原因が二要因であるもの(Alternative cause条件)であり,二要因であるものはそのうちの一要因だけが説明文に含まれているものを用意した.すなわち,条件はこれらの組み合わせの四条件であり,例えばCausal-Alternative cause条件の場合の質問は,「The mother of a newborn baby has dark skin. How likely is it that her baby has dark skin?」というものである.

これら四条件の説明に関する被験者の回答を比較することで,被験者の因果推論の傾向を推測することができる.この実験の結果が示したことは,因果推論の非対称性であった.すなわち,結果から原因を推測する場合に人はその他の要因を十分に考慮するが,原因から結果を推測する場合には他の要因を無視する傾向にあることが見出された.この非対称性の原因を説明するため,帰納のベイジアンモデルを構築する試みがあることが紹介された.

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