不気味の谷
工学・情報学メモ
[:ja]
不気味の谷についてまとめている記事です.
事実として,初期のアンドロイドは不気味だという印象を与えるものだった.そして,このような印象を与えるアンドロイドが,人間らしさの軸において「不気味でない抽象的なロボット」と「不気味でない人間」の間に配置されて印象評価実験が行われ,ロボットらしいロボット及び人間よりもアンドロイドの魅力が低いという”不気味の谷[Mori, ’70] “仮説を裏付ける実験結果が得られてきた [MacDorman, ’05].
しかし,この条件の実験だけでは, 造型次第では抽象的なロボットも不気味さを感じさせたり, 人間であっても異常な場合には不気味さを感じさせる[ Hanson,’05]ということを説明できなかった.
そして, その後のアンドロイドの造型技術の進展により不気味さをさほど感 じさせないアンドロイドが現れ始め,「 造型の不気味な抽象的なロボット」と「 外見の不気味な実際の人間」 よりもアンドロイドが魅力的に判定されるという実験結果が得られ るようになった[Hanson, ’05; MacDorman,’06].そしてこの結果に基づいて, 不気味さを規定する主要因は「人間らしさ」ではなく「 造型の美しさ」であり, 造型が美しければ抽象的なロボットでも写実的なロボットでも魅力 的になりうるということが主張され始めてきた[Hanson, ’05].
ただし, ただ造型が美しいだけでは不気味さは除ききれないということも言 われている.動きの付随により不気味さは増大する[Mori,’70]との指摘があり,動作自体が異常であったり, 動作が外見にそぐわないものであることも不気味さを引き起こすの ではないかと考えられている[MacDorman,’ 06; Ishiguro,’07].また,アンドロイドという存在自体が, 機械とは別物であるという人間の自意識を揺るがしたり, 分解される様子が死を思い起こさせたりするなど, 何らかの恐怖を与えるものであるとの説明もなされており[ MacDorman,’06], 不気味さは複数の要因が相まって引き起こされると考えられている[ Hanson,’05]. そしてそれらの要因によって生み出される不気味さの感覚は, 年齢[Ishiguro,’07]や文化[MacDorman,’06] などによっても異なる可能性があると指摘されている.
[:]