効果的に人の発表を聞くための6つのポイント
研究に携わっていると,人の研究発表を聞く機会がしばしば訪れます.しかし,人の発表の全容を理解することは基本的に困難です.この記事では,できるだけ楽に,かつ効果的に発表を聞く方法を紹介します.
①詳細理解よりも大まかな話題展開の把握を優先する
研究発表を聞くときに絶対に欠かせないのは,難解で細かい説明に囚われすぎることなく,大まかな話題の展開,すなわち「あらすじ」を見失わないようにすることです.あらすじさえ理解できれば,細かい内容については後からでも質問をして理解を深めることができます.「細かいところは分からなくてもいいから,とにかくあらすじは絶対に理解しよう」というつもりで聞くとよいでしょう.
ポイント➁話題の要点と切り替わりに敏感になる
単に話された内容を漠然と聞くだけではあらすじを把握することは難しいです.特に,研究発表に慣れていない人の発表では,今の話題が何で,その話題について結局何が伝えたいのかを明確に表現されず,さらには話題の移り変わりも曖昧なので困難です.発言内容の中で,話題と,話題の要点と,話題が切り替わるタイミングを掴むためのヒントを逃さないようにしましょう.接続語に気を配るとうまくいきやすいです.「そこで」や「しかし」などは話題の切り替わりを示す言葉です.「つまり」「したかって」などは要点を言おうとしている可能性が高いです.
ポイント➂しばしば出てくる専門用語の意味は確実に理解しよう
複数回出てくる専門用語は,あらすじの把握において重要なキーワードであることが多いです.その専門用語の意味がわからないままだと,その先の話を聞いたところで意味がわからないことになってしまいます.専門用語の解説をしっかり聞き漏らさないようにしましょう.わからない場合はその場でインターネットで調べたり,直接本人に確認をして勘違いのないようにしましょう.
ポイント➃具体イメージで話を捉えよう
専門的かつ慎重に説明された内容は抽象的になり過ぎていて,実感として理解しにくいことが多々あります.抽象的な説明は,自分なりに「例えば~ということかな」とか「この分野でいう~のことかな」のような具体的なイメージとして捉えましょう.そのイメージを持った上で説明を聞き進めれば,もし理解が間違っていた時に気づきやすいという利点もあります.その具体的なイメージに自信がない場合は,「この説明は、〜のようなものだと理解して構わないでしょうか?」と質問すればよいでしょう.
ポイント➄自分なりに説明に解釈をして話を予想しよう
ある話の説明がひと段落つきそうなときには,自分だったらそれをどのような主張に繋げるかを考える癖をつけましょう.同じような話題展開が為されれば,安心して次の話を聞けて,自信にも繋がります.また記憶にも残りやすいはずです.もし違う話が為されるようであれば,自分に勘違いがないか,なぜその話者はそのような話に持っていったのかをを考えてみましょう.わからなければ、例えば、「私はこの様に解釈したのですが,その解釈は成り立たないでしょうか?」か,「この問題に対してはこのようなアイデアの方がよいと思うのですが,そちらではなぜだめなのでしょうか」などのように質問してもよいでしょう.自分の考えに自信がある場合はあえて質問をせず,自分の研究テーマにしてしまうのもありです。
ポイント➅主張の根拠を確認しよう
「〜だと考えます」とか「であると言えます」のように何かに解釈を加えて結論づけた主張がなされたときには,その主張の説得力を支える根拠が何かを整理してみましょう.根拠が明確でない場合は,「そのように解釈できる根拠はどこにありますか?」「その方法が適切だと考える理由はなんでしょうか?」「その結論はどの結果をうけてなされたものでしょうか?」などのように質問をするとよいでしょう.論理の穴を見抜きましょう。研究の論理の穴を見抜くことから新しい研究が生まれます。別記事で紹介している論理のピラミッド構造を意識しておくことは、ここでも役立ちます。