顔の皮膚の流れを詳細に解析する

研究テーマ

人の表情表出に伴う皮膚の流れベクトルを多くの点において計測して特徴を分析し,アンドロイド型の顔ロボットの設計に役立つ情報を得ることを試みています.

表情はコミュニケーションにおいて重要な機能を果たします.しかし,複雑形状のロボット顔面部に敷かれた柔軟被覆の変形によって違和感のない,人のように豊かな表情を生成することは簡単ではありません.限られた種類の表情であれば試行錯誤的な動きの調整によって違和感を低減させることは可能ですが,再現させようとする表情のバリエーションが増えるほどに難しくなっていきます.そこで重要になるのは,人の表情表出に伴う皮膚の変形を理解することです.様々な表情を表出したときに顔の皮膚の各位置がいったいどれほどの向きにどれだけ流れているのかを把握したうえで,一見複雑に思える表情の中にシンプルなルールを見出すことができれば,より多様で表現力の高い自然な表情をロボットに再現させることができるはずです.

二次元計測データの主成分分析(2015)

人の口唇部周辺の動きとして知られている16種の顔変形を表出した際,皮膚の各位置の動きはどのようになっているのか,またそれらの動きの特長はどのような分析によって把握が可能かを検討するため,96点の計測用マーカを設置した状態で顔の変形を正面から観察した二次元画像群を用いて,各変形に対応する皮膚流れベクトル場データを取得しました.

そして,各マーカ位置において、計測した16種の流れベクトルの原点を重ね合わせたうえで主成分分析を行いました.下図左が流れベクトル場の重ね合わせの図です.各位置において様々な向きに皮膚が流れているように見えます(角度を表す矢印の色が多様です).一方,下図右が各点の第一主成分方向を示した図です(矢印の長さはその方向での流れの大きさのばらつきを表します).特に下唇の周辺で流れの大きさのばらつきが大きい(色が黄に近い)ですが,第一主成分寄与率の平均は86%と大きな値でした.つまり,各皮膚位置はほぼ特定の一方向にしか動いていないことを示しています.

この結果より,一見複雑な様々な人の表情も、主たる方向への移動量の違いの組み合わせによって実現されていることが伺えます.もしそうであれば,顔ロボットの各皮膚の位置が一方向にのみ動くように作ったとしても表情の再現力はそれほど損なわれないことになるため,設計において有利です.

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関連論文:

  1. Hisashi Ishihara, Nobuyuki Ota, and Minoru Asada. Derivation of simple rules for complex flow vector fields on the lower part of the human face for robot face design. (Under review)
  2. Nobuyuki Ota, Hisashi Ishihara, Minoru Asada. Principal Component Analysis of Two-dimensional Flow Vector Fields on Human Facial Skin for Efficient Robot Face Design. Biomimetic and Biohybrid Systems in Lecture Notes in Computer Science, Vol. 9793, pp. 203-213, July 18-22, 2016. 2nd place Best Poster Award受賞
  3. 太田信行, 石原尚, 浅田稔. 顔ロボット開発に向けた口唇部周辺の複雑で広範な皮膚の流れ場のクラスタ分析. ロボット・メカトロニクス講演会2015. p. 1A1-S07. 京都. 2015.5.18.
  4. 太田信行. 顔ロボット開発に向けた口唇部周辺の複雑で広範な皮膚の流れ場のクラスタ分析. 大阪大学工学部卒業論文. 2015.

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