効果的なプレゼンテーションのためにまず知っておくべき基本的な心構え

研究技術解説

研究のプレゼンテーションには,論文執筆とは少し異なる心構えが必要です.発表者自身の感情や自信を込め,また感覚や体験をも伝えることがある程度許されているからです.単に論文の内容を朗読するだけではそこに発表者がいる意味はありません.自分自身と自分の研究を売り込む場であることを知り,研究の面白さや価値をうまく伝えることが大事です.この記事では,プレゼンテーションとはどのようなものかという心構えについて紹介します.

この記事で紹介する心構え

  1. プレゼンは単なる「伝達」でなく「創造」の場である
  2. スライドは報告書ではない
  3. プレゼンを通じて発表者自身が評価される
  4. 相手はあなたとは違う問題意識と前提知識を持っている
  5. 相手は前のスライドを見返せない
  6. 相手は細かい情報までは覚えきれない

➀プレゼンは単なる「伝達」でなく「創造」の場

プレゼンテーションが自分の成果を伝えるだけの「伝達の場」だと考えるのは不十分です.伝達することだけに意識が向いていると,「自分が伝えたいことを伝えよう」という考えでいっぱいになり,独りよがりで聞いてもらえない発表になってしまいかねないからです.『プレゼンテーション・パターン』のサイトでは,「プレゼンは単なる伝達でなく,聞き手が自身の経験・知識を混ぜ合わせた新しい認識や発見をつくることを誘発し、次なる行動を生み出すことで、未来をつくり出す創造の場である」と解説されています.この考え方が重要です.相手の発展のためになることを意識して自分の伝えたいことを紹介すれば,相手も集中して聞いてくれるでしょう.

➁スライドは報告書ではない

プレゼンテーションは,短時間で全体の概要を紹介しつつ議論すべきポイントを共有し,聞き手から優れたアイデアを掘り出す目的で行われます.「短時間で」「アイデアを掘り出す」というのが重要です.時間がない中で大勢を集めてこの目的を達成する上では,あまりに細かい内容を難解な表現で,また淡々とした冷たい言葉遣いで説明するのは悪手です.それは論文や報告書が果たすべき役割なのです.できるだけ分かりやすく,相手の好奇心を煽るような語り口で説明されるべきなのです.「パワーポイントを禁止するべき理由をパワーポイントで解説」や「学会でこんな口頭発表が聴衆をイラッとさせる」の記事が参考になります.

➂プレゼンを通じて発表者自身が評価される

プレゼンテーションではもちろんその内容自体も評価されますが,発表者であるあなた自身の能力や態度も評価されることを知っておかなければいけません.例えば,卒修論発表会では,「その学生が卒業するのに値する能力を備えているかどうか」が評価されますので,その評価が高まるように一つ一つのスライドにこだわってプレゼンテーションを準備しなければいけないのです.『メッセージとストーリーのない発表はカスだ!』卒業論文・修士論文 プレゼンテーションの心得のサイトで大変丁寧に解説されています.

➃相手はあなたとは違う問題意識と前提知識を持っている

自分ではうまく作れたと感じた自信のあるプレゼンテーションでも,全くうまくいかず,大事な研究だと思ってもらえなかったり,間違って解釈されたり,面白さに共感してもらえなかったということはよく起こります.これは,基本的には起きて当然です.何を大事だと考えているのかは人それぞれなのです.解釈のための前提知識のレベルも人それぞれ,何を面白いと感じるかも人それぞれです.これは避けられないものとして対処しなければいけません.プレゼンテーションの序盤では,発表者と聴衆でばらばらだった問題意識・知識レベル・興味の対象を共通のものに揃えて違うを埋めるための説明が必要です.「分かりやすい学会発表をするために意識したい21のポイント」という記事がうまく解説してくれています.

➄相手は前のスライドを見返せない

論文は読者が自分のペースで読み進めたり,後戻りして読み返すことができますが,発表ではそれができません.どのタイミングでどの情報を見ることができるかは,発表者の裁量に任せるしかないのです.例えば,前のスライドと,今のスライドを見比べないと理解できないような場面に出くわしたら,聴衆はお手上げで,理解できないまま話が進んでいき,置いてけぼりになってしまいます.発表者は,このことを理解した上で,どの情報をどのタイミングでまとめて聴衆に見せるかを慎重に決めなくてはいけません.

➅相手は細かい情報までは覚えきれない

聴衆は,あなたの発表中の全ての時間集中し続けて,あなたが述べる一字一句やあなたが記載したすべての文言を記憶できるわけではありません.重要そうだと思った一部の内容しか覚えられませんし,さらに言えば,聴衆が重要操舵と思う内容と,発表者が重要だと考えている内容は一致していないことが多々あるのです.発表者はそれを踏まえた上で,絶対に覚えてもらわないとその先の話が分かってもらえない重要な内容は,重要であることがわかるように紹介しなければいけません.

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