研究の技術や工学系Tisp,その他研究上必要になった情報のメモを載せています.

発表で聞き手を迷子にさせないための9つの道案内ルール

発表とは,迷いやすい暗い森で大勢を道案内するようなものです.成功すれば,あなたが以前森の奥で見つけた発見や知識が確かにそこにあることを皆に示すことができ,称賛されますが,失敗すれば,途中で帰られたり,怒らせたり,失望させることになります.成功のためには「道案内のルール」を守ることが必要です.この記事では,シンプルですが強力な9つのルールを紹介します.

研究成果を挙げるための6つの基礎スキルを実践的に身につける方法

研究室に配属された学生さんが最低限身につけるべきスキルセットは何でしょうか.高度な専門スキルを身につけることも大切ですが,それらの習得や活用の土台となる基礎的なスキルの習得も不可欠です.この記事では,6つの基礎スキルと,それらを実践的に身につける方法を紹介します.紹介するスキルは,「論証」「要約」「意見」「構成」「管理」「確認」です. ➀論証スキル 1つ目は「論証スキル」です.これは,ある答えを導きだす論理的道筋を,飛躍なく,矛盾なく,過不足なく見抜き,また論じる能力です. なぜこのスキルが必要? 研究の議論がうまく進まずなかなか成果が出ないからです.例えば,以下のような事態に陥ります. ×スキル不足の例:無駄に終わる実験結果報告 学生さん「実験の結果,データには〇〇という特徴がみられました.この原因は□□です.だから今から…」 教員「ちょっとまって,本当にそう言えるの?原因は××という可能性もあるんじゃない?信憑性が乏しいので,もっとよく考え直してまた次回慎重な報告をし直すように…」 一方で,論証スキルがつけば,研究の議論がうまく進んで成果がでやすくなります.例えば,以下のような状況に改善されます. ◎スキルを発揮した例:発展につながる実験結果報告 学生さん「実験の結果,〇〇という特徴のデータが得られました.原因として考えられるのは,□□と××の2つです.ただし,××が原因である可能性は以前行った実験の結果否定されています.したがって,原因としては現状□□が濃厚です.ただし,他に見逃している原因があるかもしれないので,どのような実験を行えば信憑性が高まるかを検討しているところです.」 教員「もう一歩のところまで来ているね.原因が□□かそうでないか確認するには,▼▼の方法が使えると思うよ.そこまでできたら論文誌に出せそうですね.」 「Why?」と「So what?」を常に問う癖をつけよう 論証スキルを実践的に身につけるには,日々の事柄に対して「なぜ?」というその根本や根拠を探る問いかけと,「だから?」という発展を探る問いかけを繰り返すことが有効です.例えば,ある特徴を持つデータを見たときには,「なぜこのような特徴なのだろうか」や「データの特徴はこうだった.だとしたら,次に何が言えそうか」ということを考えてみましょう.ほかの人の発表を聞いた時にも,「なぜ?」と「だから?」を常に頭に浮かべて聞くように心がけましょう.別記事「論証力を身につけよう」や「ピラミッド構造で論理の弱点を見極める」も参考にしてください.「ロジカルシンキング」「なぜなぜ分析」「論理思考」「論証」などのキーワードでWeb検索するとたくさん参考情報が見つかります. ➁要約スキル 2つ目は「要約スキル」です.これは,膨大な情報の中から論理的骨格や要点を的確に抜き出してシンプルなものにする能力です. なぜこのスキルが必要か? 人に説明がうまく伝わらず,また人の説明もうまく理解できないからです.例えば,以下のような事態に陥ります. ×スキル不足の例:伝わらない進捗報告 学生さん「色々やっていて,どこから報告すべきか悩ましいのですが…まずは実験をしてみたところ,データが割ととれました.いまエクセルにまとめています.色々とややこしいのですが,グラフにしているところです.一部のグラフは見ているのですが,他はまだ見ていません.」 教員「結局どこまで達成できた?結果はよかったの?要点が掴めなくてなんともコメントしづらいです…」 ×スキル不足の例:なかなか進まない論文読解 学生さん「この論文ややこしいな…あれ,この用語なんだっけ.ああ,前の段落に説明があったのか…あれ,その前の段落では何が説明されていたっけ?ん,何も頭に入ってない…論文が読み終わらない…」 一方で,要約スキルがつけば,説明がうまく伝わるようになります.また,理解力も高まります.例えば,以下のような状況に改善されます. ◎スキルを発揮した例:うまく伝わる進捗報告 学生さん「データ集めは計画通りに完了しました.データの一部を簡易的に可視化して目視しただけですが,仮説はどうやら正しいような印象です.可視化したグラフの一覧をお見せしましょうか.それとも今後の本格的な分析の計画についてお話しましょうか.」 教員「なるほど,順調に進んでいるようだし,嬉しい結果になっていそうだね.まずはグラフの一覧を見せてほしいな.グラフをみて,データにおかしなところがないかをまずは確認してから次のステップに進もう.」 ◎スキルを発揮した例:さくさく進む論文読解 学生さん「この論文ややこしいけど,結局この段落で大事なのはこの文だけだな.他は読まなくてもいいや.で,これはきっと最初の段落で大事だったあの疑問の答えに相当するところだな.結局,この論文で大事なところはこの疑問にこのような答えを出したことだな.それだけ覚えておけば他は忘れてもいいや.よし終わった!」 「相手に響く一言まとめ」を常に考えよう.そして相手に響くかを確認しよう. 要約スキルを実践的に身につけるには,何かを書いたり伝えたりする場合に,「もっと相手に響く一言にまとめられないか」を常に考えるようにすることが大切です.また,他の人の発表や論文を読む時にも,「今ここで結局何が語られているのか」ということを常に考え続けるようにしましょう.同じくらい大事なことは,そのようにまとめた要約を人に伝え,それがちゃんと相手に響いたかをしっかり確認することです.うまく伝わらなかったなら,要約に失敗しています.相手に響くまで,要約をし直してみましょう.別記事「相手に響く結論を定めるための3つの方法」や「キラー・リーディングを身につける」も参考にしてください.「要約」「縮約」「パラグラフリーディング」「キラーリーディング」などのキーワードでWeb検索してみましょう. ➂意見スキル 3つめは「意見スキル」です.これは,目の前の事実や議論をそのまま受け入れるだけでなく,その場の論点に沿った自分なりの意見をまとめ,表明する能力です. なぜこのスキルが必要? 発展を生み出せないからです.例えば,以下のような事態に陥ります. ×スキル不足の例:意見を出さなかったことによる気づきの見逃し 終始無言の学生さんの頭の中 (同期の〇〇君の研究発表だ…あれ,自分が前にやったときと全く違う結果がでてる…どこかにおかしいところがありそうだけど,意見がまとまらない…) 教員「皆さん意見は特にないですか?では,〇〇君,研究をそのまま続けてください.」 一方で,意見する力がつけば,気づきを共有して重要な発展に繋がる議論のきっかけを作ることができます.例えば,以下のような状況に改善されます. ◎スキルを発揮した例:気づきの共有による重要な議論の開始 学生さん「〇〇君,その話には少しひっかかっています.実は,前に僕が実験をした時には全く違う結果になったのです.なぜかはわかりませんが.」 教員「もしそうだとすれば,これまで知られていなかった,結果に影響する重大な要素を見逃している可能性があるね!〇〇君,まずは彼の実験設定を詳しく聞いて,違う点をリストアップしてみてください.そのリストの中に大事な発見が埋もれているかもしれません.」 とにかく意見を表明して,反応を確かめよう 意見スキルを身につけるには,とにかく自分の意見を表明してみることが大事です.ただし,意見の出しっぱなしは効果がありません.自分の表明した意見に対する周囲の反応を確かめることが大切です.自分の意見の持ち方や伝え方が上手いものであれば,周囲の議論は活性化するでしょう.もし反対に議論が活性化せず,珍紛漢紛な反応をされたら,意見の持ち方や伝え方に直すべき点がある可能性に気づけます.その場合は,後でなぜそのような反応をしたかを皆に聞けばよいのです.失敗を恐れて意見を出し惜しみすると,学ぶ機会を逃すことになります.「論証する力」や「要約する力」をつけることも大切です.これらの力は,あなたの意見を場に即した論理的なものにしてくれるでしょう. ➃構成スキル 4つめは「構成スキル」です.これは,多くの要素の意味的類似性や重要性を考慮して全体を構造化し,その構造を明確に表現する能力です. なぜこのスキルが必要? せっかくのよい考えや成果を理解してもらうのに手間と時間がかかるからです.例えば,以下の事態に陥ります. ×スキル不足の例:要点が伝わらず,説明し直す羽目になる 学生さん「…と,ここまで細かいややこしいことをたくさんスライドで説明してきましたが,実はこのスライドの中で一番言いたいのは,目立たなくて読みにくいのですがここの隅に小さく書いているこの〇〇です.で,話は戻りますが,ここの内容は3つ前のスライドで軽く説明したあの▽▽と実は同じです.したがって…」 教員「ちょっとまって!〇〇も▽▽も目立たなくて大事な内容だとは思えなかったから,他の部分を見ていて聞き逃したし,今更3つ前のスライドの内容を思い出せないよ!スライドを戻して説明し直してください…」 一方で,構成スキルがつけば,ややこしい話もすっきりと伝えることができます.例えば,以下のような状況に改善されます. ◎スキルを発揮した例:説明がさくさく進む 学生さん「ここで一番言いたいのは,スライド上部に大きく書いているように,〇〇ということです.厳密にいえば,その下に細かく書いているようなことになるのですが,それほど大事ではないのでここではその詳細説明は省きます.それよりも大切なのは,この〇〇は▽▽とみなすことができるということです.〇〇と▽▽のどこがどう対応するかは,対応する箇所ごとに色分けしてスライドの下の図で示しています.」 教員「なるほど!そこが今回の発表の要点だね.確かに対応していることがよくわかりました.それでそれで?」 構成のパターンを使って大枠から定める癖をつけよう 構成スキルを身につけるには,大枠の構成を決めるテンプレートとして使える様々なパターンを知り,そのテンプレートを使って大枠から決めていく癖をつけることが有効です.例えば,文章パターンであるパラグライティング,論文パターンであるIMRADや砂時計,また,発表パターンであるSPINやFABE,スライドデザインのパターン,考えを整理するパターンであるリボン思考や空・雨・傘などがあります.このようなパターンで全体の構成の大枠を定めて,そこから徐々に各部の詳細を定めていくようにしましょう. 絵や漫画も,大枠を定めてから細かいところを完成させていきますよね.そうしないと完成時のバランスが崩れますし,細かいところを何度も手を入れなおす羽目になるからです.別記事「パラグラフライティングの作法」「発表の流れのパターン4つ」も参考にしてください.「論文の構成」「情報の構造化」「分かりやすい図解」「スライドデザイン」「デッサンの方法」「漫画の描き方」などをキーワードとしてWeb検索もしてみましょう.Pinterestでプレゼン資料やポスターというキーワードで検索すると,よいパターンで構成されたデザインをたくさん見ることができます. ➄管理スキル 5つめは「管理スキル」です.これは,時間・情報・物品という限られた資源を効果的に使いこなして生産性を高める能力です. なぜこのスキルが必要? 時間を無駄にし,情報を見逃し,物品の価値を発揮させられず,生み出せたはずの成果を生み出せずに終わってしまうからです.例えば,以下の事態に陥ります. ×スキルが足りない例:無駄時間が多い 学生さん「次の予定まで30分か…この時間だと実験もできないし暇だなあ.そういえばこの間読んだ本にいいことが書いてあったから,まとめとこう.あれ,思い出せないな…仕方ないから今の間にあの作業をやっておこう!まず,あれが必要だな.ん?ここに置いたはずがないな…ここにもないし,あそこにもないし…どこに置いたっけ.うーん,あ,気づいたら1時間たってた…」 ×スキル不足の例:不適切な時間配分で伝える機会を失う 学生さん「かくかくしかじか(長時間)で,〇〇のような実験をしました.その結果得られた結果が大変面白いので是非話したいのですが…」 教員「残念ながら,もう発表の持ち時間は終わってしまったね.次の学生さんに交代してください.次は大事なところに時間を割くように…」 一方で,管理スキルがつけば,無駄時間を省き,その分余裕をもって成果に繋げることができるようになります.例えば,以下のような状況に改善されます. ◎スキルを発揮した例:隙間時間を有効活用 学生さん「次の予定まで30分か…ちょうどいい隙間時間だから,明日のやる予定の発表資料作りが楽になるように,構成案をスマホにメモしておこう.そうだ,そういえばあの本のあの内容が発表の導入に使えそうだな.アプリで確認して構成案にも書き加えておこう.よし,終わったところでちょうど次の予定の時間だ.」 ◎スキルを発揮した例:大事なことを伝える機会を得られる 学生さん「得られた結果が大変面白かったので,今回の報告の主眼は結果の報告です.手法の説明はそれほど重要でないので1~2分の簡単な紹介にとどめます.必要であれば,質問に応じて後で詳細を補足します.」 教員「それはいいね.ではじっくりと結果を聞かせてください.」 作業ごとの所要時間を常に意識しよう.支援ツールを積極的に活用して情報や物品を整理整頓しよう...

Web上で文献管理 – Paperpileの導入方法と基本的な使い方

文献管理にはこれまでMendelayを使用していましたが,Googleの論文検索と相性のよいPaperpileというWebベースの文献管理サービスがあることを知ったので,使い勝手を試してみました.この記事ではPaperpileの特長の紹介を交えつつ、簡単な利用方法についてまとめます.

知らないとまずい、研究発表の9つの超基本の鉄則

研究発表について多くの経験者が口を揃えて指摘する超基本の鉄則があります.これらの鉄則を知らなければ、研究発表を成功させることは叶わないでしょう.この記事では,知らないとまずい発表の鉄則についてまとめます. ①発表時間は絶対に守る 途中で質問が来ようが,PCとプロジェクタの接続トラブルが起きようが,発表を打ち切るタイミングは与えられた発表時間内に収まるようにしましょう.決められた発表時間を過ぎたとたんに,ほとんどの相手は発表をまじめに聞くのをやめてしまいます.そうでなくても,次の予定を気にして集中力が下がってしまいます. ②相手のためになる話をする どんな人が聞きに来ているのかを事前に把握して,相手が欲しがっている情報を伝える努力をしましょう.欲しいと思っている情報を聞くと記憶にも残りやすいものですし,そもそもプレゼンテーションとは,相手のためになるメッセージをプレゼントするためのものです. ③集中していない相手にもわかるようにする 発表の最初から最後まで一瞬も集中を切らさずに話を聞いてくれる相手にだけわかってもらえればよい,というスタンスは損です.どんなに興味をもって聞いてくれようとしている相手でも,一部の言葉を聞きそびれたり,スライドから目を離したりすることがあるので,それでも話についていけるようにしておくべきです. ④目的と結論のスライドの内容を対応させる 研究目的は,発表において最終的に下される最終結論を少し抽象化したものにしておきましょう.例えば,最終結論が「Aの80%はBであった」であれば,目的は「Aの何%がBであるかを明らかにする」,「Aは何でできているかを明らかにする」などにすべきです.研究目的は,最終結論がどのようなものかを予告しておくためのものだからです. ⑤研究目的に強く関連する内容の紹介に絞る 研究目的の前の背景説明,および後で説明する結果と考察は,研究目的と強く関連するものだけにしましょう.関連の弱い枝葉末節が多ければ多いほど,最終結論の導出の論理(論証構造)が見えにくくなり,発表全体の説得力が低下します. ⑥質問には端的に答える 質問には短く答えましょう.特に,発表途中の質問に対してこの鉄則を守ることは非常に重要です.質問に対する答えが長いと,相手に「よくわかっていないんだな」と判断されてしまいますし,発表したかったことを話すための時間がその分削られてしまいます. ⑦立場を明確にして一貫させる ディベートの基本を守りましょう.何かを説明する場合の立場が揺らいでいると,急速に説得力を失います.立場が明確でなければ,主張は響きません.「ある一貫した立場において,結果を集め,それらに考察を与えたときにはどのような結論が得られるのか」ということが議論の出発点になりうるからです.自分がどのような考えで目的を設定し,データを集め,何かを作り,結果を測り,まとめ,考察し,そして各段階の結論を根拠として最終結論を導出したのかを明確にしておきましょう. ややこしい説明をしない 最終結論が何で,その妥当性のよりどころとなる根拠は何か,という論証の構造をはっきりと伝えましょう.これが伝わっていなければ,この確認のための細かい(本質的でない)議論に終始してしまい,その結論が妥当だとしたら次に何が言えるだろうか?という実りのある議論ができません. ⑨各スライドの結論と概要を先に言う 各スライドにおいては,根拠よりも結論を先に,詳細よりも全体の概要を先に説明することを徹底しましょう.結論がわかっていないと根拠を根拠として聞くのが難しく,全体の概要がわかっていないと,詳細と全体の関連が掴めません. 参考 1.研究発表の心得 

発表資料の仕上げ方 -メッセージを明確にする-

なんとなく分かりにくい印象を与える発表スライドは,「そのスライドにおいて総じて伝えたいこと=メッセージ」が明記されていないという共通の問題を抱えています.この記事では,メッセージの重要性について解説した上で,よりよいメッセージの三要件を紹介します. メッセージを明確にすれば,分かりやすく説明もしやすくなる もしあなたの発表スライドが分かりにくく,かつ説明しづらいものだとしたら,その理由は単純明快です.そのような分かりにくく,説明のしにくい複雑な内容を総じて表現することのできる,分かりやすく,説明のしやすい端的な言葉を用意できていないからです.そのような言葉,すなわちメッセージを用意して明記しておくだけで,スライドは分かりやすく,かつ説明しやすくなります. 1つ1つのスライドでメッセージを明確にすることは,発表の効果を好循環的に高めます.あるスライドで聴衆の理解度が高まれば,次のスライドも聞こうという意欲を生じさせます.さらに,分かりやすい説明がなされたために発表者に対する信頼感も高まります.そうなれば、次のスライドの内容に対する聴衆の理解度&納得度はさらに高まります. メッセージの3要件 効果的なメッセージを明記できるようになるには,自分が用意したメッセージの良し悪しを判断する基準を持っておかなければいけません.次に挙げる3つの要件はその基準になり得るでしょう. ➀Representative(代表的)であること 明記するメッセージは,スライド中の他の全コンテンツの本質を抜き出した総括表現でなければいけません.例えば,スライド中で複数の事例を紹介する場合は,それらの事例に対して共通して言えることがメッセージになります.スライドに図表を載せた場合には,それらから読み取るべき最も大事なことがメッセージとなります.複雑な図解を載せた場合は,大まかな構造の捉え方の説明(〜は主に2つの部分から成る、等)をメッセージとすればよいでしょう. この要件は最も重要であり,厳密に守られるべきです.このことはすなわち,そのメッセージにそぐわない内容はそのスライド中から削除するか,目立たなくすべきであることを意味します.例えば,ある観点で事例を紹介するスライドにおいては,別の観点からの事例は載せるべきではないでしょう.図表を記載する場合,その表示はメッセージを読み取り易いように特別に調整されたものであるべきです(例えば変化がメッセージであるなら,差や傾きのみを強調した図表とすべきです.図解表現の場合も同様に,大まかな図の捉え方をメッセージとしたのであれば,そのように捉え易いように調整されたものにすべきです(2つで構成される,というメッセージにしたのなら,2つを色分けして表示するといったようにです). ➁Understandable(理解可能)であること メッセージはスライドコンテンツの理解を助けるための案内とするためのものなので,それ自体の意味が容易に解釈できるものでなくてはいけません.つまり,メッセージを伝えたときに,「いったい何を言っているんだそれは?」と思われてしまうとだめだということです.複雑な文法を使わず,なるべく短い表現とするのがよいでしょう. ➂Informative(有益な情報)であること メッセージは,それを聞かせると直ちに前のスライドからの話の発展を把握させられる情報を備えたものでなければなりません.なぜなら,メッセージを伝えたときに「どうやら前のスライドから話はまだ進みそうにないな」と思わせてしまったら,話を真剣に聞いてもらえなくなってしまうからです.「どうやら次の話に移ったようだから,聞い逃さないようにしないといけないな」と思わせられるようなメッセージを用意することを心掛けましょう. まとめ なんだか分かりにくい‥というスライドの改善には,メッセージの明記とそれに合わせたスライドコンテンツの整理が非常に有効です.メッセージを必ず明記する!というルールに則ってスライドを作ることで,メリハリとまとまりのあるよいスライドになるだけでなく,曖昧だった自分の思考や意見も明確にすることができます.是非実践してみてください.メッセージを明記した分かりやすい発表スライドが作れるパワーポイント用スライドテンプレートを下の記事で紹介していますので,こちらもご覧ください.  

研究者のセルフブランディング

Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language. 研究者の使命の一つはその能力により生み出される価値の最大化であり,そのためには「研究者としての自分のブランディング」が欠かせません.この記事では,このようなセルフブランディングについてまとめます.

効果的な論文イントロをロジカルに書く方法

Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language. 研究論文や発表のイントロ(イントロダクション・緒言・序論)をどのように書くかは非常に悩ましい問題です.この記事では,研究課題の有用性,新規性,実現性を整理して書く方法を紹介します.

よい発表,よい論文,そしてよい研究とは -自分と他人の視点の違い-

研究をうまく進めて成果を挙げるためには,まず,どのような発表や論文,研究が良いとされるのかを知っておく必要があります.良さというのは多面的ではありますが,この記事では,研究者(発表者,執筆者)自身にとっての良さと,読み手や聞き手にとっての良さの二つに分けて説明します.これら双方にとって,良さというのは異なります.この違いを把握することで,双方にとってより良い成果としてまとめることができるようになるでしょう. 良い発表とは? 発表者自身にとっての良い発表とは,「自分の発見や成果の価値を認めてもらい,その価値をさらに高めるための援助をもらえるもの」です.自分では重要な発見や成果を得たと考えていても,それを認めてもらえなければ,後々埋もれてなかったことになってしまいます.そうなってしまえば個人的にも悲しいですし,研究分野全体としても損失ですよね.なので,発表によって価値を認めてもらう必要があるのです.良い発表をした時には,その価値をさらに高めるための支援も得ることができます.質疑応答で見逃していた点への気付きや,よいアドバイスをもらえることもそうですし,一緒に研究をしたいと声をかけられることも研究の発展のきっかけとなり得ます. 一方で聞き手にとっての良い発表とは,「自分にとって価値の高い情報を限られた時間内で効率的に与えてくれる情報源」です.研究者は,限られた時間で最大の研究成果を挙げなければいけないため,情報収集の効率に敏感です.予稿集に記載された発表タイトルを見て,自分が成果を挙げる役に立ちそうであればその発表を真剣に聞き始めますが,それほどの価値はないと判断すれば,聞きにすら来ないか,途中で聞くのをやめてしまいます. 良い論文とは? 著者自身にとって良い論文とは,「後世の人が成果を挙げるために多く引用してくれるもの」です.研究の価値は,その後の研究の発展にどれだけ寄与したか,という点にあり,その分かりやすい客観指標の一つに論文引用数(いくつの論文の参考文献リストに載ったか)があります.多くの研究の発展に寄与した論文は,その分野のマイルストーンとしての主要文献となり,研究者の評判を高めます.そうなると,よりよい研究をするための資金や人脈が豊富になるという好循環を生み出します. 読者にとって良い論文とは,「自分がさらなる成果を挙げるための足掛かりを与えてくれる,綺麗に整えられた信頼できる土台」です.研究者は,わかりやすく,正しく,新しく,かつ自分にとって有益な内容が記載されている論文を日々探しています.一から自分たちで研究を始めようとすると莫大なコストがかかり,研究の世界全体としての効率も落ちるため,他の人が到達したところから研究をスタートさせたいのです.ただし,内容が整理されたわかりやすい論文でなければ,そのような土台としては扱いづらいので,避けられます.結論の正しさや新しさが判断できない信頼できない文献も,それを土台にしてしまうと自信の成果の信頼性が損なわれるので,避けられます. 良い研究とは? 研究者自身にとって良い研究とは,「自分が実現したい未来に向かって,世界を少しずつ,継続的に変えていくための着実な一歩」です.一つの研究だけで何かがすぐに大きく変わるわけではありません.論文としてまとめる上で都合のよい結果が得られるとも限りません.ただ,その研究をすることによって,得られた結果がある意味失敗の結果であったとしても,その先にしたいと思っている研究を始めるためのきっかけとなるのであれば,それは良い研究だといえるでしょう. 一方で,本人以外の研究者にとって良い研究とは,「自分では取り組めていなかったが,解かれるべきだと常々考えていた重要な問題を解決できそうな研究」です.つまり,自分が実現したい未来に向かって世界を変えていく上での穴を埋めてくれる研究です.一人ではできることが限られているため,夢が大きな研究者は仲間を探しているのです. まとめ 本人と,本人以外の研究者の双方の視点から,よい発表,よい論文,よい研究とはなにか,ということを解説しました.自分ではよいと思っていたものがなかなか人に認めてもらえない…という悩みを持たないようにするためにも,双方の違いを認識しておくように心がけましょう.