最小限の労力で文献を読むためのキラー・リーディングの方法

研究技術解説

研究を実施する上では,多くの文献や資料から自分のためになる情報を効率よく収集する力が非常に重要です.キラー・リーディングは,この効率を高めるために考案されている技術の一つであり,是非とも身につけたいものです.ここでは,この技術についてまとめます.ポイントは,問いを持って文献に臨み,積極的に要約をして最低限の労力で自分なりの答えを導き出すことです.

問いを持って文献に臨む

文献の伝えている内容をただ正確に把握しようとするだけでは,「自分のためになる」情報は集まってきません.この文献を読むことで自分が何を得たいのかを明確にしましょう.問いを設定をすることで始めて,見落としてよい情報,見逃してはならない情報が決まるのです.例えば,「この文献で紹介されているAという手法に穴はないだろうか」「この文献の結論はどこまで信じてよいのか」「この文献の手法は自分たちの問題にも使えないか」「この研究はどのような問題意識で始められたのか」「どうやってこの結果を得たのか」などがあり得ます.

流し読みで関連キーワードを洗い出す

問いが決まれば,それに関係しそうなキーワードが文中にないかを探します.この段階では詳細な意味まで理解して読む必要はなく,流し読み程度で構いません.論文のどこに自分の問いにとって大事な情報がありそうかを前もって絞り込むための作業です.手法の穴を探しているのであれば,「採用した手続きは~」「~がこの手法の限界」「これには~の問題が」「ただし今回は~とした」「~は前提」「より精度を求めるのであれば~」などのようなものがキーワードになりえます.結果を得た手段を知りたいのであれば,「~法」「~の計測」「環境設定」「~実験装置」などが該当します.一般書の場合,目安として16個程度集めることを目標とするのもよいようです.論文の場合は上記に挙げたような決まり文句が多いので,特に数を気にするよりも,論文一般で共通するキーワードにはどのようなものがあるかを把握しておく方が重要でしょう.

問いとキーワードに関わる部分を摘まみ読みする

設定した問い,及び絞ったキーワードに引っかかる箇所を探しながら本文を読みます.関係がなさそうなところは読み飛ばし,引っかかる箇所はマーカーラインを引くか,場所と併せてメモを取ります.一度さっと読み流しており,また見るべき個所も絞っているので早く読めるはずです.論文の場合,パラグラフライティングの作法に則って文章が構成されているので,それを踏まえたパラグラフリーディングも併用すれば,もっと効率的に情報の取捨選択ができます.

自分なりの答えを導き出す

拾い上げた情報を基にして,一つの答えを導き出します.「この研究にはAという著者らも自覚している問題がある」「彼らの結論はBという前提の上でしか成り立たない」「彼らの問題意識はBである」のようなものです.うまく整理できない場合は,特に重要だった3つ程度のキーワードを絞り込むとよいようです.以下の文献を参考にしました.

  1. すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術 高橋政史

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