論文タイトルは5ステップで決める -実例付き解説-

研究の技術

タイトルは,論文中で最も短いながらも最も重要な文言です.この記事では,5ステップによるタイトルの決め方を具体例を挙げながら解説します.

この記事で紹介する手順

この記事では,下に挙げる5つのステップでタイトルを決める手順を具体例を挙げながら説明します.

  1. まずは研究の「肝」をはっきりさせる
  2. どこまで到達したのかを表現する語尾を定める
  3. 「肝」をそこまで到達させることの意義や価値を追記する
  4. 推敲する
  5. 最終チェック

論文の内容を把握していない他の研究者達にとって,まずは40字程度の論文タイトルこそがその論文の全てであり,読むべきか否かを判断する材料です.書籍や映画の題名のように目を惹くものでありつつも,内容を正確に反映したものにしましょう.ここでは,卒論・修論・博論だけでなく、学会誌論文も含めた論文タイトルを決める際の基本の手順を紹介します.

➀まずは研究の「肝」をはっきりさせる

タイトルを決めるにあたって,まずは他の研究との違いを生む「肝」や「売り」が何かを整理していきましょう.あなたの研究を特別なものにしているのは,扱った対象ですか?用いた手法ですか?得られた結果ですか?少なくとも一つはあるはずですので,まずはそれをはっきりさせましょう.もちろん,「この対象に対してこの手法を用いたこと」のように,組み合わせに特徴がある場合もあるでしょう.

読者がタイトルから知りたいのは,この「肝」です.他の論文に比べて何が特別なのかをタイトルに記載して知らせない限り,読者に特別読む気を起こさせることはできません.「この研究の肝は×××です」とはっきり言えるように,行った研究の独自性を整理することから始めましょう.指導者や共著者,また先輩や後輩に素直に訪ねてみてもよいでしょう.まだこの段階では文字数を気にしなくても構いません.言葉も口語調であったり,多少曖昧でも大丈夫です.とにかく肝を表現してみましょう.

扱った対象が肝の例:この研究の肝は,「新方式の触覚センサを扱ったこと」です.
手法が肝の例:この研究の肝は,「より安定性の高いロボット用走行アルゴリズム」です.
結果が肝の例:この研究の肝は,「ロボットの走行速度が10%向上したこと」です.

➁どこまで到達したのかを表現する語尾を定める

上記の➀で「肝」が決まったら,その「肝」について何を済ませたところなのかが分かる到達度表現を決めましょう.到達度表現というのは,例えば,「実現」「解明」「達成」「実証」「証明」「評価」「改善」「作成」「構築」「考案」「解析」「調査」「分類」「予備的実験」「試作」などです.この到達度表現が,タイトルの語尾の候補です.語尾を「研究」とするのは,到達度が分からないのでタイトルにするのは好ましくありません.到達度表現が決まったら,「肝」と組み合わせて文を作ってみましょう.ここでも文字数や言葉遣いをそこまで気にする必要はありません.

例:新方式の触覚センサの実現
例:より安定性の高いロボット用走行アルゴリズムの実証
例:ロボット走行速度10%向上の達成

➂「肝」をそこまで到達させることの意義や価値を追記する

上記➁までで,「肝+到達度の語尾」まで定まったら,次に記載すべきは「そこまでの達成を頑張ったのは何のためなのか」という意義や価値が分かるようにするための説明です.もし➁までで決めた「肝+達成度の語尾」の説明だけで,想定する読者に対して十分それらが伝わるのであれば追記は不要です.しかし,そうでなければ,「~の実現のための」「~の達成に向けた」「~の改善に資する」「~が可能な」のような,「そこまで到達すれば確かにやる意義があるね」と思ってもらえる内容を追記しましょう.ここでも文字数や言葉遣いを気にする必要はありません.

例:高感度かつ高耐久の新方式の触覚センサの実現
例:野外での高速搬送の達成に向けたより安定性の高いロボット用走行アルゴリズムの実証
例:消費電力を維持したままでのロボット走行速度10%向上の達成

➃推敲する

上記➂までは,タイトルの情報量を増やすことをやってきました.しかし,タイトルには文字数制限が設けられていることがほとんどですので,ここからは情報量をできるだけ減らさずに,また可能なら情報量を増やしつつ,文字数を少なくするための推敲が必要です.推敲の方法は下の記事を参考にしてください.内容を具体化したり,意味を限定したり,短く切ったりする作業を行います.

例:感度と耐久性を両立するコイルと磁性エラストマを用いた柔軟触覚センサ
例:野外での安定的高速搬送のための走行アルゴリズムの実証
例:追加の電力消費なしでの二脚ロボットの走行速度向上

➄最終チェック

タイトルだけで意味が分かるか

まずはタイトルが読まれて意味が分かるかどうかを確認しましょう.意味の分からない用語が入っているタイトルの論文はまず読まれません.論文の中で定義した独自の略語は用いないようにしましょう.

自明情報は省かれているか

一般的に,また特に論文を提出する分野において書かなくても当然だと判断される内容は省くことが可能です.例えば,「新たな」「発見」「興味深い」「に関する研究」などは論文となる時点で当然なので省けます.

質問形式でなく,答えを書いているか

質問形式のタイトルは人目を惹きますが,一方で情報はあえて隠しているので少なくなります.まずはその質問の答えを明確に書くことを検討し,それとの比較で質問形式としてもよいかを判断するのがよいでしょう.

過度な期待を持たせないか

よい論文タイトルとは,そのタイトルを見た時に想像した論文の内容と,実際に論文を読んだときに読み取った内容が一致するものです.過度な期待を持たせるタイトルでも,過少評価を受けるタイトルでも不適切です.

主観的な表現が入っていないか

読み手によって程度解釈の分かれる主観的な表現はタイトルに含めるべきではありません.「特別の」「非常に」「究極の」「素晴らしい」「上手な」などがそうです.

まとめ

論文のタイトルを決めるための基本的な方法を紹介しました.ここで紹介した決め方に沿わないよいタイトルももちろんありますが,まずはこの決め方をマスターするようにしましょう.

参考

一流の科学者が書く英語論文 東京電機大学出版

ピックアップ記事

関連記事